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2017年4月27日

エリツィン2.0か新冷戦か  分水嶺のプーチン・ロシア

(やっと出張シリーズから帰国しましたので、固め打ちします。以下は4月11日発売のNewsweek日本語版に掲載された文章の原稿です。モスクワ大学の学生食堂から送信したものです)

 盤石と思われたロシア、プーチン大統領の足元が液状化して来た。今回筆者が別用でモスクワに到着した丁度3月26日には、モスクワなどいくつかの都市で「メドベジェフ首相の特権濫用」(慈善財団の作った豪邸を独占私用等)に怒って集まった群衆のうち1000名近くが拘束され 、3日にはサンクト・ペテルブルクの地下鉄で爆破テロが起きた。そして親ロと言われたトランプ大統領は、国内の圧力を受け、4月6日にはシリア政府軍基地を爆撃、アサド大統領を守って来たプーチン大統領の面子をつぶしたのだ。2014年3月クリミア併合、そして15年9月シリア爆撃で米国オバマ大統領の鼻を明かし、「世界最強の指導者」と言われてきたプーチンは、これでにわかに失速。米国が強腰に転ずれば、実はロシアに打てる手はないことを白日の下にさらけ出した。

折しもロシアはあと一年で大統領選挙。プーチンの無風再選確実と思われていたのが、シナリオは俄かに崩れた。世論は、政権の「二枚舌」--綺麗ごとを国民に説教する裏で自分は特権濫用――を問題にしている。3月中旬、メドベジェフ首相の特権乱用を糾弾するビデオがYoutubeに流され、26日トムスクでの集会で12歳の少年が抑圧的な政治を批判したスピーチもYoutube で100万人以上(注:4月27日には1000万に迫っていた)が見ている 。26日の集会参加者は口々に、当局は「回答」するべきだと(ロシア語で「回答」は「責任を取る」の意味も持つ)言っているが、メドベジェフは答えない。4日には地方の知事を不正で逮捕して、世論の目をそらすお決まりの小手先の工作で、支持率は急落した。プーチン大統領についても、同様の材料はいつでも出てくるだろう。

地下鉄テロにしても以前なら、これを契機に国内の締め付けをぐっと強めたものだが、今回はこれもしない。米軍のシリア爆撃についても、御用系マスコミは一斉に非難を始めているが、プーチンは沈黙したまま。4月末に予定していた毎年恒例「国民との直通問答」(全国から寄せられた質問に、プーチンが一人で数時間にわたりテレビで答えるもの)は、2ヵ月延期されることになった。内外政とも想定外のことが増え、政権はフリーズしたようだ。

「ソ連を知らない世代」の波頭が30歳程度になった今、社会そして政治の潮目は変わる。ソ連時代のぬくぬくとした生活を知らない若者達は、当時を知る老年世代のように「自由よりパンを」ということにはならない。石油収入を老年保守世代にばらまいて手なづけ、批判は締め付けて権力を維持する現在の政権には反感しか持たない。その上、お偉方が公私混同では、もうやっていられまい。

モスクワはもう春。晴れると(それなりに)美しいし、生活は「便利で安全」になったと筆者の友人は言う。だから暴力デモなどする気はさらさらないが、あの政府の連中には何とか責任を取って欲しい。こういうまともな市民達には、「米国の陰謀」とか「イスラム・テロの脅威」など脅し文句はもう賞味期限。3月26日のようにフェースブックのロシア版で示し合わせて自発的に集まられたら、当局はもう手の出しようがない。安定した生活と恐怖政治の後退で権利意識を増した市民達――これは1985年ゴルバチョフがペレストロイカを始めた時に酷似した情勢だ。違うのは、1985年は上からの変化だったのが、今回「上」はかさぶたのように覆い被さっているということ。

メドベジェフの特権濫用をビデオにした反政府活動家ナヴァルヌイは、知名度をめっきり上げた。今後大統領選に向けて、当局がナヴァルヌイに嫌がらせでもしようものなら、その人気には火がついて、エリツィンの2代目となりかねない。エリツィンは、「特権を貪る共産党に抵抗して迫害された」というイメージを演出してのし上がったのだ。

ロシアはかくて内政混乱か、米国との対決を口実とした締め付けか。どちらも日ロ関係を進めるにはマイナスだ。だが、「ロシアはいつも荒れ模様」。4月末の安倍総理訪ロも、また綱渡りでいくしかない。
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