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世界はこう変わる

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2017年4月13日

歴史の進歩は止まったのか?

(モスクワに2週間ほど行っておりました。その間4月4日発売のNewsweek日本語版に掲載された記事の原稿を掲げておきます)

世界が(また)荒れている。米国では各省幹部もろくに決まっていないうちに、トラン
プ大統領は挫折の連続。彼が大統領令で宣言した移住者の制限は裁判所、「オバマ・ケア
」健康保険制度の改正は議会に阻まれた。民主主義はポピュリズムに堕落しやすい、これ
を立法、司法、行政の三権が相互に牽制することで防ぐCheck & Balanceのシステムを作
ろう――トマス・ジェファーソン達、欧州の近代政治思想を身につけた米国独立の志士達が憲法に盛り込んだ仕組みは、彼らのの思い通りに機能したのである。

 こうやって米国の政治は止まっているが、世界はリーマン危機後ほどには荒れていない
。先進国の経済は上向きのトレンドにあるし、米軍は世界から撤退するどころか、むしろ
シリア、イラクではISISとの戦いで増強の方向にある。2月16日には、米ロ両軍の総参謀
長がアゼルバイジャンのバクーで3年ぶりの会合を果たし、無用の摩擦を避けるために、
双方の対作戦をすりあわせていたのである(注:その後米軍はシリア政府軍の基地を爆撃しましたが、ロシアは反撃していない)。

 国民国家、資本主義という近世の大枠は、日本人、あるいはフランス人だけが「国境」
の中に固まっていい暮らしのできる、温室のような状況を戦後の先進国社会に現出した。
だがその国民国家の純粋性は、欧州、米国では他民族の流入が増大したことで破れ、資本
主義経済もドルという紙の通貨が投機で野放図に増殖してバランスを失い、バブルとその
破裂を頻発させることになった。

 そして2000年代には中国に資金、工場が流出し、先進国の大衆は賃金水準の低下と失業に悩まされる。2008年のリーマン危機がそれを追い討ちし、米国では多くの者が失職。その後の回復過程においても、一部の者に所得が集中する格差はむしろ激化した。またリーマン危機は途上国、旧社会主義国の経済も悪化させ、大衆の不満はアラブの春、あるいはウクライナ危機という形で噴出した。

 その中で「国民国家の終焉」、「資本主義の限界」、「近代の進歩という概念の行
き詰まり」が話題となっている。トランプの登場がそれに油を注ぎ、「グローバル経済の
終焉」、「世界の保護主義化」が声高に騒がれる。だが、我々はそのような表面より、も
っと低層に流れるものを見つめるべきでないのか?

 例えばこの世界で何が起ころうと、殆どすべての人間は、誰にも自分の権利を侵されず
、いい生活をしたいと思っているはずだ。それは近代欧州で民主主義とか進歩とかいう概
念に昇華して今に至るので、古びたようでもこれらの理想は人間性の根幹に根ざし、今で
も世界を動かしている。ポピュリストやデマゴーグはそのことを忘れ、人種差別や過激な
ナショナリズムなど人間の劣情を一時的に煽り立てているだけなのだ。

 そして経済のグローバル化も後退しない。トランプも、自国の自動車産業は守りたいが
、金融サービス、通信機器、航空機や農産品はどんどん輸出したい。どの国も同じこと。
自由貿易、あるいは保護主義一本槍の国などありはしない。世界貿易機関)があって、164の加盟国に低レベルの関税を義務づけている限り、経済はグローバルなものであり続ける。

 米国が麻痺している今、ロシアのプーチンは「世界最強の指導者」と呼ばれ始め、中国
の習近平は「自由貿易の旗手」を気取る。中国は5月14日には北京で「シルクロード首脳
会議」を開いて、ユーラシア大陸の盟主を気取るだろう。まるで戦前日本が主宰した大東
亜共栄圏の中国版だ。日本でも、「内向きになった米国から離れて中国と同盟を」などと
言う者が出ている。

 しかし、トランプの挫折、森友学園問題をめぐる日本での騒動は、ロシア人、中国人に
、民主主義の良さを認識させ始めている。これまで西側のプロパガンダに過ぎないと思っ
ていた「民主主義」がホンモノで、西側の指導者は勝手なことはできない、ということが
わかった時、彼らは自分達の国のあり方を見直そうとするだろう。

これまで中国に所得が流出して先進国の暮らしは苦しくなったが、その結果、中国経済
、世界経済が大きくなった今は、中国への輸出を増やしたり、賃金が相対的に安くなった
先進国に生産を戻したりして、今度は中国の大衆も含めてグローバルなスケールで「進歩
」に向かって進めるだろう。

日本人も浮足立つことなく、戦後営々と作って来た「一億総中流社会」が世界的にも如
何に貴重なものであるかを見つめ直し、社会、経済を立て直していきたい。

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