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世界はこう変わる

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2017年1月13日

中国は善、米国は悪の時代

(昨年12月末発刊したメルマガ「文明の万華鏡」より)

トランプ氏の政策はまだ不明ですが、台湾の蔡英文総統との電話会談を非難した中国に対して、「では中国は南シナ海の島埋め立てについて事前了承を求めていたか?」とツイッターで切り返した件は痛快でした。何か言われたら、それとは無関係のことで切り返して相手を不利な立場に追い込む――これは公衆の面前での口げんかでは非常に効果的なやり方で、声明とか会見とか、通常のしゃちほこばった外交ではとても応対できないものです。

「中国は一つ? 聞いてねえ」という趣旨のトランプの発言は、コロンブスの卵的な新機軸。つまり米国大統領に面と向かってそう言われると、中国としては実はどうしようもない(戦争に訴えるしかない)、1972年米中が外交関係を設定した時には、米国の立場が弱かったので(ベトナム戦争へのソ連の介入を止めさせるために、ソ連と対立していた中国と手を結ぶ必要があった)、あえて「一つの中国」を認めたのですが、現在の米中関係においては対米貿易に多くを依存する中国の立場の方がむしろ弱いのです。トランプ氏は、「中国は一つ」を認めるかどうかを、これからの米中間の交渉マターに変えてしまいました。「ワルの外交」の典型です。

中国はこのまま、トランプ氏のツイッター外交にやられっぱなしになるのか? 私はそうは思いません。中国はトランプに叩かれても叩かれても笑みを浮かべ、「中国は米国との友好、自由貿易を大切に思っています」と言っていればいいのです。

と言うのは、トランプ氏はNAFTA等多国間FTAの否定、環境問題での後退等、このままでは世界の多くの国の離反を招くに至るからで、中国は「中国こそ善意の国。自由貿易の旗手。世界環境問題克服の旗手」というプロパガンダを展開する余地が出てくるからです。

同じことを長く、世界中どこでも言い続ける――それは、中国共産党の小回りの利かないプロパガンダの手法でも十分できることで、トランプ氏はツイッターで騒げば騒ぐほど、自分で自分の首を絞めることになるでしょう。中国が来年、「シルク・ロード諸国首脳会議」のようなものを挙行すれば、ロシアまで含めて、中国からの融資・投資を希う諸国の首脳を蝟集させることになるでしょう。

もっとも、中国は外貨準備が急激に減少、大騒ぎされたAIIBもこれまでに実施が報道された案件は協調融資も含めて僅か数件、海外での大盤振る舞いに対して国内世論から批判の声があがっています。

12月25日には空母「遼寧」が西太平洋に出たことが大騒ぎされていますが(遼寧及びその護衛艦隊は遠洋で長期作戦を展開する力を持たず、艦載機等の戦闘能力も限られています。有事には直ちに無力化されますし、宮古海峡も通れなくなります)、トランプはこれを自分に対する挑戦と受け取るでしょう。中国もトランプのオウン・ゴールを待てばいいのに、これまでの惰性が止まらず、こけ脅しで威張ろうとする・・・軍が習近平の足を引っ張るようになっているのです。
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