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世界はこう変わる

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2016年12月 7日

何と言っていいのやら 中国 ロシアによる国際刑事警察機構支配

(これは、11月29日付日本語版Newsweekに掲載された記事の原稿です)

帝国の逆襲
―内向き米国がもたらすもの―

 11月10日、インターポール(ICPO: 国際刑事警察機構)はバリ島での総会で、次期事務総長に中国の孟宏偉公安部副部長を選出した。同時にロシアのICPO代表アレクサンドル・プロコプチュクを事務次長の一人に選出した。中国人、ロシア人がICPOの要職に選出されたのは初めてのことだ。

ICPOは1923年、国際刑事警察委員会(ICPC)として創設されたが、本部のあったウィーンがナチ・ドイツに併合されると、本部はベルリンに移されて、ナチの公安機関SSの幹部達が総裁のポストなどを牛耳った。1956年にICPCは現在のICPOに改組され、本部はフランスのリヨンに置かれている。

ICPOは加盟国(現在190カ国)の警察の間の連絡機関のようなもので、「国際指名手配」はするものの、自分では逮捕・送還の権限は持っていない。例えば中国の公安が海外のウィグル系独立運動家や国外に逃亡した汚職官僚を、ICPOを通じて国際指名手配しても、その運動家や官僚が逃げ込んだ国が中国と特別の協定(司法共助協定)を結んでいなければ、何もできない(その国の政府が特別に中国に引き渡すことは可能)。それでもICPOという国際機関のお墨付きがあるということは、中国が犯罪人の拘束と引き渡しを他国に求める場合、中国の立場を大いに高める。

西側の人権保護団体は今回の選出結果を強く批判しているが、強権主義の国がICPOを利用、あるいは率いていけないという決まりはない。ロシアはこれまで自国のマフィアやテロリストを、ICPOを通じて何度も国際指名手配している。前述のように、ナチ・ドイツのSSがトップの座を占めていた例さえある。

中国はなぜICPOトップの地位を狙ったか? それには、面白い経緯がある。2014年2月、スペインの裁判所が大御所の江沢民元国家主席等、元幹部5人をチベットでの大量虐殺に関与したとして、ICPOを通じて何と国際指名手配したことがある。この判決は中国当局にとっては驚天動地、さぞかし多数の担当者の首がとんだことだろう。そのあたりから、中国はICPOを牛耳ることを狙い始めたのだろう。来年は北京で年次総会を主宰することになっている。

トランプの米国が内向きになっている隙をついて、経済では保護主義、政治では強権主義の国々が中ロを旗頭に逆襲して来た気配がある。中国はそのカネの魅力で途上国・中進国の票を動員、世界の国際機関、国際組織の幹部ポストを次から次へと掌中に収めていくだろう。それが一概に悪いわけではないが、そうされると日本が困る機関、組織については、対策を考える必要がある。

11月19日、ペルーでのAPEC首脳会議の際の二国間会談で習近平は、「『アジア太平洋自由貿易協定』(FTAAP)を共に先頭に立って推進しようと、プーチン大統領に呼びかけた。FTAAPは元々ASEAN諸国がAPECの目標として掲げていながら、TPPに先行されて実現できていないものなのだが、これを中ロが換骨奪胎、自分達が主導する貿易ブロックにすり替えようというのである。

別に目くじらを立てることでもないのだが、中国、ロシアという旧社会主義諸国が主導する国際組織というものは、西側が主導した場合に比べて政治優先、経済的な中身はおざなりで日本の政治的・経済的利益に合わないケースが多い。米国主導の場合でも、その締め付けにはきついものがあるが、こちらが法治・アカウンタビリティーの原則を前面に立てると米国も引き下がる。

トランプ氏はTPP反対の立場を崩していないが、TPPができなければ、中国はFTAAPでアジア太平洋を囲い込んでしまうだろう。米国はその輸出の25%近く 、輸入の35%強を アジア諸国に依存している。このままでは、トランプ氏の目標とする「強いアメリカ」は「強がるだけのアメリカ」になってしまう。

日本人にとって人権、民主主義、そして自由貿易は不可欠のものだ。トランプが考え直すまで、志を同じくする諸国と一緒にがんばろう。RCEP(ASEANが主導する「東アジア地域包括的経済連携」交渉)のような米国抜きの場では、自由化度の深化に努める。中国と敵対・対抗する必要はない。日本の利益にかなう方向で協力していけばいいのである。FTAAPやRCEPが十分な内容を備えたものになれば、トランプの米国もそのうち保護主義から醒め、加盟を申請してくるだろう。

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