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世界はこう変わる

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2016年11月15日

トランプは外交では内向きにならないのか

米国のトランプ氏については、まるでジョーカーが当選したかの騒ぎですが、今ワシントンでは共和党のお偉方たちがよってたかってトランプ氏を「食べ」始めたようです。
トランプは、選挙戦ではあたかも共和党を乗っ取ったかの様相を呈しましたが、いざ当選すると、何をどうしていいか、どこにどういう人材がいるのか、わからないのでしょう。
結局、新政府の陣容人事では、共和党のお偉方たちに主導権を取られた感じがします。

そしてトランプはこれまで、インフラ修理・整備に重点を置くこと(毎年10兆円分)を明らかにしていますが、国防長官の呼び声があるSessions上院議員のインタビューを読みますと、「軍事力整備を大々的に進めて中ロとの差を決定的なものにする。これによって両国の妄動を封じ込める。一方、レジーム・チェンジや民主化運動等、逆効果ばかり生んできた(ネオコン的)政策はやめる。つまりロシアなどを無用に刺激することはやめる」という趣旨を言っています。宇宙配備兵器SDIを作るというソ連への脅し、国防支出増による財政赤字、これによる金利の高騰というのは、30年前のレーガン時代を髣髴とさせるものがあります

このSessionsなどが言っていることは、「内向きの」政策どころか、その正反対です。
日本の一部のマスコミは、「内向きのトランプ」の登場は、日本が「米国から独立する」好機だとの論調を張っていますが、トランプ政権は内向きには多分、ならないだろうということです

つまり、日本の防衛を「日本に投げる」のではなく、「日本にもっと負担させながら日米同盟を強化する」という方向になると思います。

日本としては、「思いやり予算、もう十分払ってるからもう払わない」というネガティブな対応をするのは政治的でなく、日本にとっても都合の好い方向にトランプの要請を誘導するべきです。例えば単に「カネを払う」代わりに、「F35を合計ウン十機購入する」とか、米国の巡航ミサイルを購入するとか、日本の防衛力の充実に役立つ方向で、米国に貢献するのです。

もう一つ、米国に貢献できるのは、財政赤字が増えるだろう米国の国債を日本が大量に購入することです。

以上の判断をする契機となったJeff Sessions上院議員とその仲間のRandy Forbes下院議員のインタビューのさわりを下記にまとめておきます。
今、日本にとって非常に重要な時です。風邪を召されませんように。


(10月30日 Defense Newsより)

1. Sessions の発言
1) オバマ政権の時代、世界のいずこでも情勢は悪化し、米国は挑戦を受けるようになった。しかし今の時点でトランプが、個々の問題について詳しいことを言うのは、避けるべきだと思う。米国の信用と世界の安定を取り戻すための方策をじっくり考えねばならない。

2) トランプは、力で平和を確保するという立場。オバマの時代、国防予算は削られ、軍部の地位は下げられた。国防予算の削減は止めねばならない。
国防支出は増えるだろうが、オバマ政権がやったような、「国防予算増分と同等の増加を他の分野ではかる」ことはしない。
核兵器を急激に削減することによって、敵が米国を侮るようなことは避けねばならない。米国は核兵器の分野でも、いずれの国にも凌駕は許さない。ロシアに対しても、米国は核兵器を近代化することを明確にしておく。

3) 何が核心的な国益化をみすえねばならない。それは同盟・友好体制を再構築(Rebuild)し、外交政策を現実的なものにすることだ。それは、うまくいかないことを実現しようとし、結局はものごとを更に悪化させて、人命・経済の犠牲を生むことはやめるということだ(注:具体的に述べていないが、ウクライナ、シリア等での民主化レジーム・チェンジのことだろう)。

4) 米国の同盟国は、自分で負担する分を増やさねばならない。彼らが何に資金を投ずるべきか一概には言えないが、米国がGDPの3,6%を国防に費やしているのに対して、NATOで2%以上を費やしているのは5カ国しかない。

5) トランプはまず、就任30日以内にISISを軍事的に破壊するだろう。ISISは米国にとって直接の脅威だからだ。そして移民政策においては、米国の安全を害するような人間は入国を認めないだろう。

6) ロシアとの関係は悪化しすぎている。米国の本当の国益は何かを見据えながら、これを変えようと試みなければいけない。ロシアとは、今よりはるかに協力できる(be harmonious)はずである。

7) 中国は自己主張を劇的に強めている。中国軍はこれまでにない水準で日本に近づき、日本はスクランブル発進を迫られている(注:ここで発言は途切れ、中国への姿勢は明らかでない。南シナ海問題は言及もされていない)。

8) 太平洋重視(Pacific pivot)は続けるだろう。その言い回しがいいかどうかは別にして。しかしこの問題はForbesが考えている。

9) トランプは国産エネルギー資源の生産を拡大し、それによって雇用を増やすだけでなく、世界の危険な地域への資源面での依存を減らすだろう。

10) サイバー・テロに対しては、防御だけではなく攻撃能力も開発する。攻撃に反撃する能力がないと、十分な防御ができない。

11) 米軍は現在の48万人から54万人に増強。特に海軍増強を重視。

12) トランプは、イランと北朝鮮を念頭に、ミサイル防衛能力も重視している。米国東海岸にもMDを構築したい。


2. Forbes議員発言

1) 米国が国防力を削減したことは、ロシアと中国を勇気づけ、米国の軍事力を凌ごうとする野望を抱かせてしまった。米国が国防力を充実させれば、彼らは軍備を増強しても無駄になると悟るだろう。

2) トランプは戦争をするのがいいことだとは思っていない。シリア、リビアでは国民がひどい目に会ったし、エジプト、イラクも回復していない。

3) 国防戦略はホワイト・ハウスのNSCではなく、国防省が策定するようにする。これまでの8年間、世界中の戦略をNSCが策定してきたことで、どこでも情勢は悪化している。ホワイト・ハウスは自ら戦略を策定するのではなく、選択肢を提供される。

4) 国防省は早期に新たな国家防衛戦略(National Defense Strategy)を作成する。現在の戦略ガイダンス(注:National Strategic Guidanceと言っているが、2012年のDefense Strategic Guidanceのことだろう)は僅か12ページのもので、話にならない。

5) 2007年海軍は、現場が必要とする能力の90%分を保有していたが、今年は42%になっている(注:根拠不明)。空軍は米国史上、最も老朽化し、最も小さくなっている。海兵隊もこのままでは衰退する。
海軍は346-350隻の艦船を必要とする(注:本件記事によれば、オバマ政権は、現在272隻を308隻に増強予定)。海兵隊は現在18万に減少しているが、トランプは20万にしようとしている。
空母を増やすかどうかはわからないが、潜水艦は必ず増強する。この10年で米国の潜水艦は41隻になり(注:これは攻撃型潜水艦のみの数字で、戦略ミサイル搭載の原潜は含まれていない)、中国の半分になってしまった。

6) オバマ政権は巡洋艦を11隻退役させようとしているが、トランプは、AGIS性能を持つ多目的巡洋艦・駆逐艦を重視している。我々は強くなることによって、平和を維持する。

7) Pacific pivotというのは、別に新しい政策ではなかった。これからの10年、世界貿易の3分の2が多分集中し、世界の主な海軍、陸軍が関心を払っている地域は重要だ。しかしオバマ政権の過誤は、中東等アジア以外の地域でもはや役割を果たさないですむと考えたことだ
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