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2016年9月18日

中央アジアで グレートゲーム が再現するのか?

(これは9月13日付Newsweek日本語版に掲載された記事の原稿です)

中央アジアで「グレート・ゲーム」の復活?
――剛腕カリモフ大統領の死がもたらすもの――

中央アジアの雄、ウズベキスタンのイスラム・カリモフ大統領が2日死去した。78歳。ソ連崩壊で独立して以降25年強、一貫して大統領の座にあった。その間、強権政治を西側に非難されながらも、外交・経済両面での自立を旨として、ウズベキスタンという新しい国家の形をつけ、人口3000万の大国の安定を維持した。その点で賞讃に値する。

 ウズベキスタンは人口と軍事力で、中央アジアで群を抜く。しかも、他の中央アジア4カ国のすべて、そして不安定なアフガニスタンにも接している。大統領の交代がこの国を不安定化させれば、中央アジア全体、そしてロシアにも影響が及ぶだろう。

ウズベキスタンの憲法は、大統領が執務不能になった場合、上院議長が代行し、3カ月以内に大統領選を行うものと定めている(注:その後8日、ウズベキスタンの国会は大統領代行にミルジヨエフ首相を選定。大統領選挙は12月4日に決まり、9日から選挙戦が開始された。ミルジヨエフ以外に有力候補はいないので、彼が当選する勢いである)。

この国では以前から、地方毎の「クラン」の勢力・利権争いがある。継承にからんでこのクランの対立が先鋭化、これに大統領の長女グリナーラ(2年半前、自宅に軟禁されたが)、あるいは中国、ロシアが絡めば、情勢はしばし荒れ模様となり得る。

荒れ模様。それはウズベキスタンの北方、ロシアとの間に日本の7倍の国土を持つ、石油大国カザフスタンも同様だ。ここのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領も、ソ連崩壊直後からの大統領。高齢なのに、後継候補が定まっていない。彼が急死すれば、彼の長女ダリガも加わっての権力闘争が展開されるだろう。既に5月から国内ではテロ・暴力事件が頻発し、宗教過激派の所為とはされるものの、実体は闇の世界も関与しての利権、権力闘争ではないかと言われる。

「グレート・ゲームの再来」はない

情勢はどこまで荒れるか? それは世界にどんな意味を持つのか? 第1次世界大戦の前、この地域(チベットも含めて)ではインド洋への南下を目指すロシア帝国と、それを阻止せんとする大英帝国の間で鞘当てが起き、それは「グレート・ゲーム」と呼ばれた。だが、今の中央アジアに大国が関与してのグレート・ゲームは戻って来ない。米国が中央アジアに本格的に関与する意欲を持っていないことが一つ。介入する大義名分がない上に、軍隊を送ってもこの内陸部では安全に兵器・物資を運び込むことができないのだ。

ロシアはどうかと言うと、この地域への支配欲は持っていても、それを実現する経済力を欠いている。ロシアは旧ソ連の勢力版図を回復せんと、EUを真似て「ユーラシア連合」を、安全保障面では「集団安保条約機構」なるものを立ち上げたが、いずれも未熟児状態のままである。

最近では、中央アジアで中ロが勢力争いを始めたと言われる時もある。中国は「一帯一路」と称し、この地域の経済利権を漁ろうとしているが、問題はこの地域に資金需要は大きいものの、経済性を持つ案件は少ないということだ。そして中国は、中央アジアの安全保障を肩代わりする姿勢は示していない。だから中ロは机の下で足の蹴り合いくらいはしても、衝突はしないだろう。中ロとも、相争って主敵米国に対する立場を悪くするようなことは絶対避ける。
だから中央アジアでは、権力継承をめぐってテロや暴力事件は起きるだろうが、グレート・ゲーム、あるいはアフガニスタンばりの長期内戦は起こるまい。

安倍総理は昨年10月、中央アジア5カ国を一度に訪問して回る大挙を成し遂げた。そしてそれ以前からもウズベキスタン、カザフスタンの両国を中心に日本は累積約5000億円のODAを供与していて、作ったインフラ、工場等は多数に上る。

中央アジア諸国は、ロシアや中国一国のみに依存して自主性を失うことを嫌うので、日本はこの点格好のオプションを提供している。中央アジアは中国やロシアの裏庭に位置するので、この5カ国が自主性を持ち、日本を支持してくれれば、日本の対ロ・対中外交にとっても力となる。ウズベキスタンはその中で日本に寄せる期待には特に大きなものがあり、日本が行った協力にも大きなものがある。カリモフ大統領の業績を大事にしていきたい。
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(この本の最終章はウズベキスタンの抒情詩のような文章です)

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