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世界はこう変わる

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2008年4月11日

08年3月のモスクワ(2)―ー地下鉄寸景

地下鉄のホームに下りて行くあのエスカレーター。
東京なら大江戸線の深い深い駅に降りていく程の深度のホームに向けて、一直線のエスカレーターがすごい音を立てて回っている。すごい馬力で回しているのだろう。
100メートルほどの長さ、先はほとんど霞んで見えないほどの長さに人がびっしり立っているから、計算するとそれだけで20トンにはなるだろう。

以前はこれは、日本のエスカレーターの2倍はあろうかという猛スピードで動いていたから、うまくタイミングを合わせて乗るのが一苦労。足を取られて転ぶ老人が続出したそうで、今は随分のろくなった。それでも日本のエスカレーターに比べると1.5倍くらいの速度で動いている。
面白いのは、35年の昔から、手すりの方がエスカレーターより微妙に速く動いていくことだ。だから手すりに手をかけていると、手の方がどんどん先に行ってしまい、ついにはバランスを失って倒れかねない。因みに、モスクワの地下鉄のエスカレーターでは急がない人は皆右側によって急ぐ人を通す。日本の関西と同じなのだ。

その長い長いエスカレーターの終わるホームの上には、小さなガラスのブースに老婦人が腰掛けて四六時中エスカレーターの方を見上げては、事故の有無を確認している。
ということになっているのだが、90年代の混乱期にはここには誰もいなかった。今ではいつ見ても人が座っている。そして大体はブースの中の電話にかじりつき、あらぬ方を見て長電話にふけっている。まともに勤務していたのは、1人しかいなかった。

モスクワの地下鉄も35年前と変わらない。例えばあのドア。
両開きのドアが、閉まる時には両側から全力で迫ってきてそのまま速度を緩めずがしゃーんと閉まる。はさまれたら肋骨の数本でも折れかねない勢いなのだ。
そして四隅も合っていないような粗雑な作りの車両も、発進となるとロシアの大地のパワーを見せて、立っている乗客はそのまま次の車両までなだれていってしまう・・・のではないかと思われる勢いで加速する。
そしてすごい音を出して暗いトンネルの中を突っ走るので、時速100キロでも出ているのかと思うのだが、そこは社会主義時代の慣わしで、地下鉄も全力で走っているふりをしているだけで、実際は40キロほどのスピードなのだ。

もっとも、地下鉄の名誉のために言うと、最新鋭の車両も走っている。ここではドアは静かにしまるし、ドアの上には電車が今どの駅のあたりを走っているかを示すLEDの表示もあるのだ。

ある駅で、老婆が入ってくるや、乗客に大声で呼びかける。
「すみません。皆さん。助けてください。27歳の娘が病気で治療しなきゃいけないのですが、私年金しかないのです。娘は小さい頃からの身体障害で・・・」。
演技かもしれないとは思ったが、とりあえず100ルーブル(400円ほど)上げて様子を見ていると、それが呼び水となったのか15歳くらいの少年が寄ってきて金を差し出す。
老婆が車両を移動していくと、座っている乗客達も何人かが金を出す。

僕は思い出した。90年代初め、フィンランドの大デパート、「ストックマン」はモスクワの一隅に小ぶりのスーパーを開店して市場調査を始めていたが、そこにある日買い物に行くと、店を出たところ、泥雪の上に老婆が立っていた。
「モスクワの孫のところにやってきたのですが、郊外の自宅に帰る電車賃がないのです。貸してください。」。
あまり真に迫っていたので電車賃を上げてしまったのだが、この老婆はなぜか毎週そこに立っていて同じ口上を述べていたのだった。

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