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2016年6月10日

ロンドン市長にパキスタン出身のイスラム教徒 の意味合い

(これは、5月25日発刊のメルマガ「文明の万華鏡」よりの抜粋です)

ロンドン市長と言えば、日本の都知事にも似た重要なポストだが、前市長のボリス・ジョンソンが国政に打って出るため三選を辞退したのを受け、5月5日選挙が行われた結果、労働党の推すサディク・カーンSadiq Khanが史上最高の130万票、56,9%の得票率で当選した。彼は、家族についてパキスタンから移住してきたイスラム教徒であり、市長就任の宣誓式でも聖書ではなくコーランに手を置いて決意を誓った。もっともコーランは旧約聖書を一般市民にもわかりやすいように説く内容だし、聖書とさして変わりはしないのだが、刺激的であることは間違いない。

ロンドンでは労働党が強く、カーンはイスラムだからではなく、労働党員だから当選したのである。ロンドン郊外の白人居住区でも、彼は善戦している。但し、英国に260万のイスラム人口がいるうち、ロンドンにはその5分の2が住んでいるという事情はある。

しかし一部には、彼の選出は英国が多民族国家として成熟した証(英国民のうち、外国生まれの移民は2011年で11,9%を占めている。ピカデリー広場で「本当の英国人」を見かけることは稀になった)だ、イスラムを不利な地位に落としたままで差別を続けるフランスなどより先を行っていると誇る向きもあるが、人種問題はそんな簡単に片付くものであるまい。

それでも、サディク・カーンのロンドン市長選出は、世界文明史上においても一つの画期を成すものと言えるだろう。世界的に進行する、国民国家の多民族化を象徴するものだ。もっとも、前任のボリス・ジョンソンも、実はオスマン・トルコ、ユダヤ、英国王室という複雑な血脈に属しているのだが。

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