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世界はこう変わる

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2015年9月 7日

これからは 中国経済救済 の時代

(これは、1日発売のNewsweekに掲載された記事の原稿です。1日頃の情勢を想定して事前に書いたものですから、少し先走りしたところがありますが、自分で目撃したソ連崩壊の時との比較など、いくつか面白いところがあります)

中国で、地獄の釜の蓋が開いた。経済危機だけならまだしも、今回はそれに政争がからみ、ガバナンスの危機が訪れようとしている。習近平国家主席は、9月3日対日戦勝70周年記念式典、9日は大連で世界経済フォーラム(夏季ダボス会議)で勢威を誇示、その勢いで訪米に臨もうとしていたが、その訪米にも延期の可能性が出てきた。9月4日アンカラで予定されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、中国は経済救済を要請する羽目になりかねない。

 日本も威張れたものではないが、中国の経済成長は脆弱性を内包したままである。例えば2006年には約2300億ドルの経常収支黒字を上げ、約730億ドルの外国直接投資 を受けているので、合わせてGDPの10.9%相当の外資が流入したことになる。これは、当時の成長率12.68% の大部分を説明することになる。英国も米国も日本もかつて、海外からの富の流入で工業化を飛躍的に進展させたのだが、中国の場合その度が過ぎていたのである。中国の中国は今でも輸出の半分を外資系企業に依存 、これによって得た外貨をGDPの40%にも相当するインフラ投資 でふくらませ、リーマン危機の際には40兆円相当以上もの融資垂れ流しで乗り切った。

 この20年以上に及ぶ成長期の間、中国本来の経済は「国営型」、つまり計画経済時代さながら、大企業は国営のままで、幹部は共産党、政府の上部から送り込まれている。いわば経済でないもの、そして統計もあやふやなものを我々は西側の手法で分析して感心し、実力でないものを実力と誤認してきたし、中国人までその気になって、5年もたたないうちにすっかり大国気分になってしまった。

しかし、野放図に積み重ねられたインフラ投資は今、不良債権化し、金融不全を起こしている。製造業では、海爾などいくつかのグローバル企業は生まれているが、自動車では国内市場でさえ海外企業に勝てない。つまり中国は、インフラを建設し続ける以外には、自前の成長原動力を欠いているのである。
 
政治と経済で競合脱線

 問題が経済だけならまだしも、今回は政治危機も重なっている。習近平政権はその発足に当たって薄熙来・重慶共産党書記の挑戦を受け、収拾のための粛清は軍、公安機関トップに及んだ。危ない綱渡りだ。両機関は中国政権の力の基盤だからである。同時に、共産党に対する国民の信をつなぎとめるために腐敗一掃の動きに出たものだから、まだ根強い江沢民一派を完全に敵に回した。そして悪いことに、令計画・前党統一戦線部長を拘束した時、その弟の令完成が習近平陣営幹部の不正についての大量のファイルを持って米国に逃亡してしまう 。もし米国政府が習近平陣営の弱みを握ってしまったら、習近平訪米の結果はろくなものにならない。だから訪米は、日程も発表されないまま、うやむやになる可能性がある。

中国経済後退の時代

これからの中国はどうなるか? 絶対的な権力を握っていた鄧小平が死去した1997年には、スターリンの死去(1953年)後ソ連で起きたような激しい権力闘争が起きることが恐れられたが、外資流入による仮初の繁栄でそれは回避されたかに見えた。今、それが表面化するのか? あるいはソ連の末期と同じように、権力闘争が国内の民族紛争、経済混乱を激化させるか? 当時、ゴルバチョフ指導部はリガチョフ政治局員を頂点とする保守派と争っていたが、ゴルバチョフが外遊するたびに保守派の策動で民族暴動などの騒ぎが起きた。情勢が流動化する中、デマゴーグのエリツィンが台頭し、地方分権化の口車に乗って地方はモスクワへの税上納を停止、ソ連政府は行き詰まる。同じことは中国でも起こり得る。

あるいは、習近平陣営は江沢民一派と妥協するかもしれない。その場合、腐敗一掃を指揮し、返す刀で江沢民一派を追い詰めてきた王岐山・党中央規律検査委員会書記は更迭されるだろう。中国は経済を支えるために日本の資金・技術を貪りながらも、政治面では反日を前面に出し、政冷経熱の状況を現出するだろう。しかしもし高齢の江沢民にもしものことがあれば、また局面は変わる。

インド洋やアフリカ、中南米、バルカンまで世界を席巻する勢いだった中国マネーの巻き戻しが始まる。世界を驚かせていた4兆ドル弱もの外貨準備も、資本の流れが逆向きになれば儚いものだ。2014年第4四半期の資本収支は約900億ドルの赤字 になっている。中国が世界中で手掛けている建設案件の中には、途中で放置されるものが増えるだろう。中国にしがみついていたロシアも、8月にはアゼルバイジャンでの天然ガス開発につきルークオイル社が、中国のAIIBではなく、欧州復興開発銀行とアジア開発銀行の協調融資を受けている 。

これからは、中国経済救済が課題となってくるだろう。中国経済の変調は西側諸国の輸出を減らし、不況要因となる。中国が米国債、ユーロ債を大量に売却すれば、西側の金利は上昇してしまう。中国の金融当局あたりは、西側諸国に支援を既に密かに要請してきているかもしれないし、そのうちに欧米は日本の対応をせっついてくるだろう。日本は対中輸出依存度が大きいが(2014年上半期で約18% で、米国より僅かに下回る)、その多くは対米欧輸出向け最終製品を中国で組み立てるための部品、製造機械である。従って日本は自分のために中国経済救済を急ぐ必要性が欧米より小さいのだが、対中救済の動きが起るならそれに積極的に乗っかって、対中、対欧米発言力を確保していくのが上策というものだ。

中国が外貨準備を取り崩す際、米国債を大量売却するのに備えて、日本が米国債を大量に購入する構えを示すのがいいし(それは2003年の「平成の大介入」に類似して、円高防止の意味も持つ)、これまで中韓・ASEAN諸国と練ってきた金融危機相互救済メカニズム「チェンマイ・イニシャティブ」(危機の際の相互の通貨スワップ)を初めて使ってみてもいい。その時には、中国に対して上から目線で対応してまた積年の怨みを残すことを避ける。反面、中国が未来永劫恩に着てくれることも期待しない。ただ、国連の安保理事会での日本の常任理事国化への反対くらいは控えてもらわないといけないが。
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