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2015年7月11日

制裁とロシア経済 日ロの関係

(これは月刊「ロシア通信」7月号に掲載されたものです)

 ロシアがクリミアを武力も使って併合し、西側が制裁措置を取って以来、ロシア経済はそれでどうなるのか、日ロ経済関係はどうなるのかが関心の的になっている。米・EU・日がそれぞれ少しずつ異なる制裁措置を取っているが、ロシア経済に最も痛手になるのは、①ロシアの石油・天然ガス部門への資金と技術の新規供与の停止、そして②ロシアの銀行・企業に対する長期資金の供与停止であろう。そしてこれより更にロシア経済の脆弱さをついたのは、原油価格が2014年末、僅か2ヶ月で1バレル50ドル以下と、ほぼ半減したことである。当時、多くの者はロシア経済の大崩れを予想した。

当面持ちこたえているロシア経済
 しかし1992年、1998年とロシア経済が大崩れした時いずれもモスクワで生活していた筆者から見れば、現在のモスクワはまだ天国のように見える。制裁とは言いながら、西側の高額商品が店にあふれ、道路は外車で渋滞しているのだ。だから、プーチン大統領は4月以降数度にわたって「ロシアは危機を乗り切った」と言っている。

これに対して経済の現場を仕切るシルアノフ財務相などは、楽観を戒める発言を繰り返す。楽観、悲観入り乱れているが、両者は同じ事象の別の面を見て発言をしているので、双方とも実は正しい。楽観材料から言うと、ロシアの富の源泉である原油生産は2014年、ソ連崩壊以後の最高水準を達成した。原油輸出価格はドル・ベースでは半減したが、ルーブルがドルに対してこの1年で45%も減価したため、ルーブル・ベースでの輸出収入は減らず、資源輸出から得られる政府歳入(原油・天然ガス関連税収は、国家歳入の60%以上)も1-2月、対前年比10%の減少に止まっている。それもあり、GDPは本年第1四半期は対前年同期比で1.9%の下落に止まった。ルーブルの急落はインフレ率を16%強にまで高めたが、これも現在は下降の方向に向かっている。

 ルーブルが下落し西側での起債も制限されたことで、ロシア企業の対外債務返済が滞ることを危ぶむ向きもあった。5500億ドルの民間対外債務がある(公的債務は殆どない)のだから、3750億ドルの外貨準備では足りない、と言うのである。しかし、「対外債務」の40ー50%は実は海外で運営されているロシア人自身の金融資産に対するものなので、繰り延べ、借り換え可能である。それを勘案すると、2015年の純返済額は700ー800億ドルの水準だと思われるが、原油輸出収入だけでも1600億ドルは確実に超えるだろうから、返済に窮することはあるまい。またロシアの企業は昨年10月時点で約1兆ドルの海外資産を有しており、うち2200億ドルは現金、株なので、現金化して返済にあてることも可能である。加えてガスプロムは昨年9月末現在、190億ドルの現金・普通預金を持っていたし、ロスネフチも164億ドルを保有していた。

 資本の海外への流出は、今年1000億ドル内外になると予想されているが、その多くはロシア企業が所有しているものであり、いつかはロシアに還流してくるだろう。

心配材料
つまり、「ロシアにとって『危機』は思った程のこともなく、乗り切った」とプーチンが胸を張ろうと思えば張っておかしくない。しかし、原油価格の低迷があと1年も続けば、ロシア経済も方々で辻褄が合わなくなってくるだろう。まず原油価格1バレル・100ドル程度を前提に作られているロシア政府の予算は大幅な組み換えを迫られる。既に財政赤字は拡大しており、第一四半期はGDPの4.9%相当に上っている。現在、軍・諜報・司法機関が歳出の40%、医療、年金補填等社会保障が35%を占めているが、軍需、社会保障を削減すると大きな政治的・社会的な反発が起こるであろう。

もう一つの懸念材料は、消費が大きく落ちたままであることである。昨年12月にルーブル下落による輸入品価格の急上昇を見越しての駆け込み需要があった反動で、消費が落ちている(2月の消費は対前年同期比7.7%減)こともあるが、ことはそれより根が深い。インフレで、実質賃金が昨年より約10%落ちたことが大きくのしかかっているのである。消費不振は、それでなくとも高金利などで沈んだままの企業の投資マインドを益々冷やすだろう。1~2月の投資額は、対前年同期比で6%強も減少している。そのためGDPは4月に向けて対前年同期比4.3%減と、下落幅を高めている

今後原油価格が徐々に回復するとしても、ロシアが明るい未来に向けて再スタートを切れるわけでもない。ロシアの政体は「シロビキ」と呼ばれる保守的な公安勢力を力の基盤としたものであり、民主化は言うに及ばず、経済の近代化、特に製造業の近代化は後れる一方であろう。先進国では人工知能、遺伝子工学等、これまでのパラダイムを大きく書きかえる技術革新が新たな産業革命を起こそうとしている今、資源輸出から得られる富をゼロサム的に配分するしかない現在のロシアは、先進国とは異なる次元の低い文明に停滞することとなろう

日本はどうする
EUのイタリアはレンツィ首相が訪ロした上、プーチン大統領を招待したりしているが、日本がこのような抜け駆けをした場合の米国の反発は大きなものとなるだろう。そして日本の企業も、米国で事業を展開している場合には、米国の対ロシア制裁に右へならえをさせられ、逆らえば米国政府に制裁されるリスクを常に勘定に入れておかないといけない。
とは言え、ロシアは今でも約5000億ドルの輸出収入を得、1億4千万の人口を抱える大市場である。それに制裁で孤立しパートナーを求めているロシアは、今が買い時とも言える。米国、EUとも今はロシアと対立しているようでも、自分の都合とあれば、原則を曲げてでもロシアと手を握る。自身でアンテナを張り、リスクを計算し、ワルでしたたかなビジネスを展開していく時代なのではなかろうか

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コメント

投稿者: にいの としのり | 2015年7月13日 15:35

先日は浦安市民大学で講義をありがとうございました。内容はとても意義のあるものでした。団塊に世代に取って安保は大きなイベントであり、内容が正しく伝わりました。
最後に、非常識な者が場所と時間をわきまえず失礼な対応を致しました事、一緒に拝聴した者として許せません。ご気分を害されたと存じます。
途中で止めさせようと思いましたが、思いとどまりました。お詫びしたくてメールさせて頂きました。

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