Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2014年9月 9日

国際経営断片 外国人のトリセツ

(以下は、今書いている本からの抜粋)
日本の本社で外国人社員と机を並べている日本人がこぼすのは、「外国人は理屈っぽい。外国人は自己主張がきつい。外国人は口がうまい」ということである。特に修士号や博士号を持っている外国人は、「〇〇曲線」とか「××の理論」とかいう術語を使って話すから、こちらはもうお手上げということになりがちだ。

しかしここは、ワルになれば何とかしのげる。修士や博士と言っても、仕事と理論は違う。こちらはいつもものごとの本質を考え、それに自分なりの理論づけをしていれば――これをCONCEPTUALIZATION=概念化と言う――、外国人が大学で生カジリしてきた「××の理論」などには負けない、と思ったらいい。外国人が、「〇〇曲線ではこうなる。だから・・・」と言い始めたら、「トム、そんなことは誰でもわかっている(本当はわかっていない)。だが、今ウチが抱えている課題は〇〇曲線をどのように現実に適用するかということなんだ。それについて僕は、これこれのことをするべきものと思う」とやれば、トムは何が何だかわからなくなって勢いをくじかれてしまう。ワルになろう。もっともワルになるためには、自分でもものごとを良く見ていて、自分なりの意見を持っていないと駄目なのだが。

次に「秘書」の使い方で日本人は戸惑う。僕が初めて外国に赴任した時、いちばん戸惑ったのも、外国人の「秘書」がいたことだった。外国の企業や役所では、幹部に一人一人秘書がつく。そしてまるで自分の分身のように、電話の受け答えや、書類のコピーや、日程の管理をやってくれる。ところが、日本の組織はケチで、コピー取りから外回りの相手とのアポ取りまで全部自分でやっているので、秘書を使え、それも外国語で使えと言われても、最初は戸惑ってしまうのだ。

だがその後、秘書を使っていて習得したこともいくつかある。それはまず、外国人の部下への指示は細かく具体的にする、もしその結果がまずければ、その部下を叱責する前にまず、自分の指示の仕方に足らないところがなかったかどうかを、頭の中で点検してみる。もし指示の仕方に問題がないと自信が持てれば、その部下を叱責するのだが、そのやり方は部下の人格や能力全体をけなすものであってはならず、どこがどうまずいのかを具体的に説明しなければならない。日本の組織ではよく、ろくな指示も出さずに、「あいつは気が利かない。あいつはダメなやつだ」と決めつけがちだが――これは実際には、その部下に責任を丸投げしているだけなのである――、外国ではその場合、上司の方がダメなやつとされてしまう。

つまり、自分も働き、自分のやっていることを部下に見せ、自分が何をどうやってもらいたいか、それはどんな手順でやればいいか、良く説明しなければならないということである。但しこの世界には、上下間の命令・服従関係が当たり前の、軍隊のような国もある。そのようなところで部下をあまり対等に扱うと、かえって増長させてしまう。郷に入れば郷に従えで、そのような場合にはきちんと「命令」を出せるようでないといけない。

その延長で言うと、部下に命じた調査や資料はしっかり読んで、おかしい所、足りない所を直させることが必要だ。何をやっても日本人の上司からは反応が返ってこないということだと、外国人の部下はやる気を失ってしまう。誉め言葉とともに、一、二か所誤りを指摘されれば、その上司を尊敬するようになるものだ。

外国人の部下がよく不満に思うのは、仕事のやり方について改善を提案しても上司に受け入れてもらえず、その理由について説明がない時である。外国人にしてみれば、日本の組織のやり方で不合理、非効率に見えるところは多数ある。日本の本部に十万円単位の支出まで細かく監督されていることも納得できない。

そういう時は、その部下の提案をなぜ採用できないのか、よく説明しておくことが必要である。説明しておかないと、外国人の部下は猜疑心を持ちがちである。「提案しているのが同僚のBでなく、自分だから受け入れてもらえないんだ。この上司は、自分が嫌いなんだ。クビにしたがっているのかもしれない」と思って、転職先を探しはじめたりする。

こうして、情報を外国人部下とシェアするのは重要なのだが、例えて言えば自分の下着の色まで情報をシェアすることは不要だ。情報シェアも程々にしておく。たとえば利益の送金のからくりなどをべらべらしゃべると、その部下がライバル企業に転職した時告げ口し、そのライバル企業が地元の税務署に密告したりするからだ。

外国人の部下とは一緒に呑みに行ったりして、信頼関係を深めなければならない。しかし、外国人部下となれなれしい関係になってはならない。信賞必罰の心構えでいかないと、相手は必ず増長する。日本人はいったん他人を信用すると、その人に心を際限なく許すが、外国ではそれはやめたらいい。

また、自分が使う通訳の水準はきっちり把握しておかないと、仕事で大失敗をする原因にもなる。と言うのは、通訳は自分が理解できないことを言われると、それをごまかして「通訳」することがあるからである。通訳は、自分の能力が足りないことを、上司に知られたくないのである。従って、よく使う通訳の能力、信頼度については、できればその国の言葉に通じた日本人に一度くらい同席してもらい、チェックしてもらうことが必要なのである。

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