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世界はこう変わる

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2012年9月28日

QE3は第2プラザ合意 やられるのは日本? 中国?

9月13日、アメリカの連銀はリーマン・ショック以来、三度目の金融大緩和、QE3に踏み切った。アメリカの経済は回復基調を強めているのに、雇用が思ったように伸びないことと、大統領選を前に金融界の支持も得たいことから、金融を緩めたのだろう。

これが世界をどう変えるか? 中にはアメリカがハイパー・インフレになり、ドルは大暴落、国際通貨の地位を失って、金本位制が復活する、と「予測」する向きもいる。そうなれば、世界は大乱だ。
で、僕もFXでドルを売ろうとしてちょっと調べたのだが、二〇〇八年以来の二度の緩和措置QE1とQE2(合計16カ月)では、合計2兆3千億ドルの資金が供給されたのに対して、QE3は月400億ドルの住宅ローン抵当証券を買うということで、ペースはQE2、QE3と同じ、しかしもし大統領選後の年末にはこれをやめるとするなら、それまでに供給されるカネは2000億ドル程度にしかならない。これなら、大したことにはなるまい。

それでもQE3が続けられたりして、ドルが大崩れしたとする。すると何が起こるか? まずアメリカの国内はシェール・オイルとシェール・ガスが出回ってきたために、ガソリン価格や電力価格はそれほどあがらず、大したインフレにならないかもしれない。インフレになったとしても、それは輸入を減らすし、国内生産や輸出を有利にする。

結局いまの状況は、1985年、石油価格が暴落してアメリカ国内のインフレ懸念が遠のき、「プラザ合意」が可能となったときに良く似ていて、ドルが崩れてもプラザ合意のときと同じく、輸出が増えて好況を招く可能性さえある。つまりQE3は大したインフレをもたらさないどころか、むしろ「第二プラザ合意」になる可能性すらある。

これは、1985年のプラザ合意で日本が受けたような打撃を中国に与えるかもしれない。「ドルの崩壊」は中国の興隆を決定づけるどころか、その挫折をもたらすかもしれないということである。そしてドルは減価しても、相変わらず世界通貨として使われ続けるだろう。第二次世界大戦のあとでさえ十年間も、ポンドは主要な国際通貨として使われ続けたのである。

ドルが減価すると円高になって、日本からの輸出は難しくなる。だが精密・先端技術を使った部品とか機械はどの国でも必要なので、輸出個数は落ちないだろうし、円ベースでの利益もさして落ちないだろう。それに日本は、資本を持っている。ドルが減価すればその価値は海外ではますます大きくなって、海外企業の吸収合併を容易にするだろう。但しそれも、吸収したあと外国人をちゃんと使いこなせれば、の話しだが。

そうなると、ドルが大幅に減価したとしても、日米欧を中心とする「先行発展組」諸国はその優位性を失わないどころか、立場を強化する可能性さえある。ヨーロッパ諸国は、ユーロが下がったことでむしろ輸出を増やしやすい状況にある。戦後、アメリカ、欧州諸国は、通貨を時々切り下げては輸出を増やし、その経済的地位を保ってきた。一ドルは360円から80円以下に、1マルクは1980年には140円もしたのが、ユーロ発足時には50円強に下がっている。そしてアメリカもドイツも、繁栄している。日本も、部品を高く売りつけ、大きくなった資本で外国企業を買収してやっていけると思う。

だから日本はこれからも、アメリカやEU諸国も引き込んで、グローバルな自由貿易の発展、民主主義の普及(権威主義の政体は国内の力を戦争に向けて集中しやすく、外国にとって危険である)に役立つような外交をグローバルに展開していけばいいのである。

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