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世界はこう変わる

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2016年7月23日

NATO首脳会議後の米ロ対話路線

8-9日ワルシャワで、NATO首脳会議が開かれた。この首脳会議は最近では2年に一度くらいずつ開かれる。

冷戦後のNATOはソ連という標的を失い、アフガニスタンでの活動に力を入れるなど「自分探し」を続けてきたが、ロシアのクリミア併合で我を取り返し、「ロシアこそ脅威。ロシアこそ敵」というコピーを繰り返すようになっていた。これはポーランドやリトアニアなど、ロシアの軍事的圧力を身近に感ずる加盟国が焚き付けてそうなっている面が強い。米国で強硬な対ロ路線を主張するネオコン分子等の中にも、これら地域の出身者が多い。

今回の首脳会議の直前までは、米国の国防省もロシアを「主敵」と名指しするなど(国防予算を取るには大型の敵が必要である)大いに頑張った。ところが首脳会議の直後の13日、NATOの本拠地ブラッセルではNATO・ロシア評議会の大使級会合が開かれ(クリミア併合で長らく停止された後、本年4月に再開していた)、バルト海上での軍用機衝突を防ぐため措置を取ることを暫定合意するなど、「相互の意志の疎通」がはかられている。

ロシアは経済不振、米国はオバマ大統領の任期中に懸案に形をつけておきたい事情があって、シリア、ウクライナ問題では話し合いを前面に出したアプローチを強めている。このNATO首脳会議も、その文脈の中で処理された。

今回のNATO首脳会議の主要な結果は次のようなものである
なお、英国のEU離脱が欧州の破局であるかのように言われるが、英国はユーロも採用しておらず、EUの中では一歩離れた場所に以前からいた。そしてNATOでは英国は、欧州諸国と米国の間のかすがいとして、引き続き重要な役割を担っているのである。

・(ロシアの脅威にさらされている)ポーランド、バルト三国に1個大隊ずつ、計3-4000名(兵力提供は米、英、独、加)を配備

・イランのミサイルから欧州を守るため、米国が欧州に配備するMDをNATOの指揮下に置く
(ロシアは、これに反発。ロシアのミサイルを狙ったものだとして、西欧との国境周辺に核ミサイルを配備する構え)

・2020年まで毎年10億ドルほどの支援をアフガニスタン政府軍に行うとともに、訓練要員としてNATO軍を2016年以降も残置する

・ISISとの戦いのために、NATOがイラク政府軍を訓練する。

(なお今回、モンテネグロがNATO加盟を認められたとの報道が行われているが、それは未だ最終的ではない。この国は法治、民主主義、腐敗の点でNATO加盟国としての基準に合わないと見なされており、一定の改革を行わないと、正式加盟は認められないようになっている。モンテネグロを今のままで入れると、マケドニア、ジョージア、ウクライナなどが「何でモンテネグロが先に」と不満の声をあげるだろう。)


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