Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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2012年7月15日

ユーラシア情勢バロメーター(2012年4月―6月の中央アジア)

ユーラシア情勢バロメーター(2012年4月―6月の中央アジア)
              (7月16日アップし、17日キルギスの項に加筆、
             18日中央アジアに対する日本のODA供与額を修正した)
概観
(1)米軍のプレゼンス恒常化への動きと中国の攻勢

繰り返しになるが、米国が2014年のアフガニスタン「撤退」後も、アフガニスタンと周辺の中央アジアに何らかの軍事的プレゼンスを残す構えが明瞭になっている。それはアフガニスタンの安定確保だけではなく、イラン、そして中国の新疆地方に対する圧力の手段としても機能するだろう。
他方中国も、中央アジア、アフガニスタンでのプレゼンスを拡大しつつある。中国はこの地方で経済的利益を得ることだけではなく、ウィグル人問題を抱える新疆地方、そして他ならぬチベットの向かい側に米軍がプレゼンスを続けようとしていることを見て取って、今から布石を打とうとしているのだろう。
こうして、中央アジア、アフガニスタンのあたりは例えて言えば、中国、ロシア、イランといったいくつかの大陸プレートに分かれて漂流を始めた感がある。そのプレートのいくつかには米軍が乗ることになるかもしれない。

(なお6月4日NATOは、ウズベク、カザフ、キルギスと、アフガニスタンから欧州へ向けてNATO・ISAF軍の兵力・装備を「これまでとは逆方向に輸送」することについて合意に達したと発表した。タジキスタンが抜けている理由は不明。なおトルクメニスタンもアフガニスタンと国境を接しているが、中立国なので、この輸送の話しには以前から表向きは加わっていない。但しトルクメニスタン上空をNATO機は通過しているし、アフガニスタン国境に近い都市Mariの空港が時々使用されているとの報道もある)

(2)CSTOからのウズベキスタンの離脱
 ロシアにとって中央アジアは、ソ連崩壊後も強い影響力を行使できる数少ない地域なのだが(但し今の時点ではベラルーシ、ウクライナ、アルメニア、モルドヴァでもロシアの地歩は改善されている)、それが上記の中国、米国、イラン等の動きに攪乱される度合いが高まっている。
その最たるものは、6月28日ウズベキスタンが、対アフガニスタン政策での不一致を理由に、CSTO (ロシア肝いりの「集団安全保障条約機構」。NATOに対抗するためのもの)への「参加を停止」したことである。CSTOはもともとカリモフ・ウズベキスタン大統領が旗を振って作られたものだが、ウズベキスタンは1999年にも、アゼルバイジャン、グルジアとともに「参加を停止」している。同国は2006年に「参加を回復」した後も、共同軍事演習には参加しない等、一匹狼ぶりを発揮してきたのだが、今回はふたたび「参加を停止」したわけだ。ちなみにこの「参加を停止」というのは、CSTOの規約に定めがあるわけではなく、一種の登校拒否のようなもので、またいつでも「参加を回復」することはできるのだ。

(3)ウズベキスタンと米国の軍事協力進展の可能性
ウズベキスタンは2001年9月11日事件の直後、米国の要請を受け、南部の大空軍基地ハナバードを米軍使用のために供与した(カリモフ大統領はプーチン大統領に電話をして了解を得た)。これを受けて米国は短期間のうちに日本を抜いてウズベキスタンへの経済援助供与国No.1となり、ウズベク側は米国からの大規模援助に期待を寄せるようになった。だがその期待は、2005年5月東部の対キルギス国境の町アンディジャンで起きたテロ事件で市民が多数巻き込まれて政府側に殺されたことの責任をめぐり、米国がウズベク政府にきつい姿勢を見せるに至って最終的に破られた。カリモフ大統領は米国に政権交代(「regime change」)を迫られることを恐れて、ロシア、中国への傾斜を強め、ハナバード空軍基地から米軍を追い出したのである。

その後ウズベキスタンは、米国との関係改善を徐々に進め、アフガニスタンの米軍の補給ルートとして国内の鉄道(カザフスタンを通じてロシア、欧州に至る)の使用を認めてきた。昨年末パキスタンが米軍補給路を閉鎖してからは、このウズベク経由の「北方補給路」(ウズベキスタン経由の他に2つある模様)は、米軍の補給の80-90%を担ってきた。クリントン国務長官をはじめ、米国政府の関係要人はウズベキスタン、タジキスタン詣でをかなり頻繁に行っている。

そしてこの半年、アフガンから撤退する米軍の装備をウズベキスタンが大量に受領する可能性、あるいは撤退後の米軍の拠点を提供する可能性などがマスコミで云々されていて、昨年12月のCSTO首脳会議では「外国に基地を提供する場合にはCSTO加盟国全員の同意を得ること」という牽制球が投げられていた。カリモフ大統領は、この点にけりをつけたのだろう。

だが、ロシアはこれを事前に知らされていたようで、公的な反発は示していない。プーチン大統領のスポークスマン、ペスコフは「ウズベクの参加停止はこれまでもあったことで、ロシアに対する圧力ではない。これはロシアとウズベクの関係には響かない」と述べている。だが、中央アジアに当面の外交の重点を置き、2015年にはユーラシア経済同盟を樹立したいとしているプーチン大統領にとっては、就任早々冷水を浴びせられた感じは拭えない。ロシアの識者が指摘しているとおり、CSTOはこの際再編成して、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンで形成している「単一経済空間」(2015年から発足を予定される「ユーラシア経済同盟」の胚芽)のための防衛組織とした方が、効果を発揮するかもしれない。

(4)ロシアの退潮
こうして、中央アジア地域ではロシアの力が退潮傾向にあるのだが、経済面においてもロシアは曲がり角にある。EUへの輸出依存度が高いロシアは、ユーロ危機のあおりを受けることを覚悟しており、プーチン大統領も既に歳出削減の構えを示している。だが現在の世界経済は、それ以上の危険性をロシアに示している。それは景気が低迷しているなかでシェール・ガス、シェール・オイルの生産が本格化したことで、これによってエネルギー価格が長期にわたって低迷する可能性がでてきたことだ。原油・天然ガス輸出関連に国家歳入の半分強を依存してきたロシアにとって、これは非常に大きなリスクを意味する。

2000年~2008年にかけてのロシア経済は、GDPが6倍(ドル・ベース)になるという、世界でもまれな高度成長を示したが、これは1990年代から始まった米国経済の金融依存増大(銀行預金の債券化、グラス・スティーガル法改訂)で世界にあふれたドルが、世界原油価格を押し上げた波に乗ったものに過ぎない。プーチンはその波頭に乗ってロシア復活の雄となったが、今度は波の去った海原でボードを手漕ぎで進めていく役割となった。1985年~86年の世界原油価格暴落の最中に共産党書記長となり、改革政策の暴発で政権と国を失ったゴルバチョフの影がちらつく。

(5)日本がやることは中央アジアで大きな意味を持つ
中央アジアに話を戻すと、米中の動きが活発化するなかで、ウズベキスタン、カザフスタンでは指導者が70代半ばにさしかかり、後継者をめぐる動きも活発化することが見込まれる、動意大の時期に入った。その中で日本の外交は、少なめの動きでも大きな効果を生むことができる。中央アジアの諸国にとって日本は、ロシア、中国、米国のいずれでもない、小さすぎも大きすぎもしない政治力と大きな経済力を持った国として、見栄えのする協力相手だからである。日本は中央アジアにこれまで約30億ドルものODAを供与し(うち半分程度は円借款で、その元本は利子とともに返ってくる)、「中央アジア+日本」という外相レベルの定期会合フォーラムを持っている。それだけの道具立てを中央アジア、アフガニスタンに対して持っている国は、世界でもまれである。貿易関係はなかなか進展しないが(カザフスタンのウラン等資源関連を除いて)、少なくとも外交面で中央アジアは、日本が常に出場、プレーしている地域であるべきだ。

ロシアの動き
(1)プーチンは、大統領就任早々、直ちに旧ソ連諸国の首脳をモスクワに呼びつけた。5月7日に就任して1週間、15日にはモスクワで、旧ソ連(バルト三国及びグルジアを除く)NIS首脳会議、そしてCSTOの首脳会議を行ったのである。死に体と揶揄されてきたNISは、メドベジェフ前大統領が昨年9月、タジキスタンのドシャンベで結成20周年記念会議をやった時には、ベラルーシ、アゼルバイジャン、ウズベクの首脳に無視されるという屈辱を蒙ったのだが、今回は全員、それもEU寄りと喧伝されたモルドヴァの新大統領Timoftiまでやってきた。そして5月20日シカゴで開かれたNATO首脳会議には、事前言われていたこととは異なってNIS諸国の首脳は臨席せず、外相レベルが送られた。この首脳会議に赴かないことを決めていたプーチン大統領に、NIS諸国首脳が敬意を払ったものと言える。プーチン大統領2期目の威光がこのあたり、まだ残っているのである。

メドベジェフ大統領は力を欠いていたし、後ろで糸を引いているのがプーチン首相であることが明白だったので、旧ソ連諸国の指導者たちはメドベジェフを適当にあしらってきた。それにもともと旧ソ連諸国の人々は、「交代」とか「引き継ぎ」というものを理解しない。VIPが代わるのは失脚の結果なのであり、利権を次の者が簒奪したことを意味するので、後継者との関係には身構える。

(2)5月15日付のValdai Discussion Clubで、モスクワ大学歴史学部副部長アレクセイ・ヴラソフは、「これからの数年、中央アジアはロシア外交の焦点となるだろう。ここを失えば、ロシア南部が不安定化する」と書いた。それに先立ち5月7日発表されたプーチンの大統領令「ロシア外交路線実現のための諸措置について」では、PKOへの貢献を拡大することに続いて、NISに重点を置くこと、中でも政治関係以外での協力に重点を置き、昨年10月18日に署名されたNIS自由貿易協定の実現をはかっていくこと、またベラルーシとの連合国家に最大限の評価を与えるとともに、関税同盟、単一経済空間を推進して05年1月にはユーラシア経済同盟(EAS)を発足させることに重点を置くこと、を言明している。

(3)その「ユーラシア経済同盟」だが、プーチン大統領はエリツィンがめちゃめちゃにしてしまったソ連を(経済面を中心に)復活させることを悲願としており、「ユーラシア経済同盟」はそのシンボルなのだ。これについては、「妙なものに重点を置くなかれ」とか(米国のロシア専門家Anders Aslund)、「ユーラシアに過度に偏向してEUを軽視している」(6月22日モスコフスキエ・ノーヴォスチ)とかの批判があるが、考えてみるとロシアが今、能動的な外交をできるのは、NIS方面ぐらいなものなのだ。欧州方面はNATOに固められているし、アジアは中国が台頭している。シリアやイランでロシアは存在感を示しているように見えるが、それは西側のやることに抵抗し、その抵抗を一つずつ取り下げていくたびに西側から何かを搾り取るという、弱者の外交なのだ。

だが、欧州志向の強いロシアの知識層は、「ユーラシア同盟」構想ではさほど盛り上がりを見せていない。また一般の国民にとっては、旧ソ連の復活よりも、自分たちの生活向上の方が喫緊の課題だ。4月17日のコメルサント紙でのインタビューで、下院の国際問題委員会副委員長アンドレイ・クリモフ(ユーラシア対話担当ということになっている)が言っている。「ユーラシア同盟では、ロシアが主な払い手(スポンサー)になってはいけない」、「ウクライナを入れることがもっとも重要で、これに関税同盟国(つまりベラルーシとカザフスタン)を入れれば十分」、「外交、国防については共通政策を作ることもあるだろうが、共同軍を作るわけではない」と。つまり、本音での歩留まりは低いのだ。

(4)因みに6月22日のモスコフスキエ・ノーヴォスチ紙によれば、サンクト・ペテルブルクで開かれた恒例International Economic Forumでも、「ユーラシア」の過度の強調とEU軽視が目立った由。「ロシア・EU ビジネス対話」分科会での、ロシアのメイン・スピーカーはフリスチェンコ・ユーラシア経済委員会議長で、ロシアが7月には加盟する構えのWTOや、加盟を志すOECDへの言及はあまりなかった。EUからの参加者もロー・キーで、EU委員会から次長クラスが一名参加しただけの由。分科会に遅れてやってきたロシア企業家Vekselbergは、「WTOだけがロシアの将来への道だ」と捨て台詞のように発言して退席した由。。

ウズベキスタン
(1)ウズベキスタンについては、CSTOへの「参加を停止」したことが大きなニュースである。但しロシア等CSTOの個々の加盟国とは、これからも二国間ベースで協力を進めるとしていること、6月5日プーチン大統領が北京へ赴く途上、急遽数時間タシケントに立ち寄ってカリモフ大統領と会談し、「戦略的パートナーシップ」関係を強化することで合意していたこともあって、ロシア政府は表向き反発していない。

(2)そのプーチン大統領の来訪だが、6月5日付独立新聞によれば、5月15日モスクワでのNIS非公式首脳会議の席上、カリモフ大統領から招待したのだそうだ。ウズベキスタンと中央アジアの覇を競う、カザフスタンのナザルバエフ大統領も、後れてならじとばかりにプーチンを強引に招待したが、プーチンはカリモフ大統領の顔を立ててか、5月末の対ロ友好記念日にはメドベジェフ首相を名代として送るにとどめ、今回は北京訪問の帰途カザフスタンに立ち寄った。

(3)カリモフ大統領はもともと、プーチン大統領を高く評価している。彼は以前現地のマスコミに、「エリツィン大統領に比べてプーチンは言ったことは必ず実行してくれる」ということを述べていた。プーチンが大統領2期目を終わろうとする2008年2月、カリモフはモスクワに飛び、メドベジェフが脇に侍るのを尻目に、プーチンに大声で言ったものだ。「プーチンさん、次の期もやろうと思えばできたのに、あなたが退くことになって非常に残念だ」 そしてこの後、数年にわたって、ウズベキスタンとメドベジェフ大統領の関係はぎくしゃくしたものになった。

今回カリモフ大統領はプーチン大統領を歓迎し、「あの時、3期目をできるのに、と言ったのは正しかった」と述べるとともに、「あなたが来るのを、待っていた。アフガニスタンは米軍、NATO軍が撤退するので危なくなる。(タリバンが)アフガンの外にでてくるかもしれない。アフガン政府軍を強化しないと。15万いた外国軍が、9月末には6万8千になるのだから」と言ったそうだ(6月5日の独立新聞)。カリモフ大統領は、CSTOへの参加をしばらく停止し、それによって米軍の残置兵器を受け入れるとともに、有事の際の米軍の拠点も設ける程度のことをプーチンに説明したかもしれない。

(4)だがカリモフ大統領は、いくらプーチンを高く評価していると言っても、ウズベキスタンの利益を優先する。2001年9月11日事件の直後にも、米国の要請を受け入れてハナバード空軍基地を提供したのだ。
ウズベキスタンにとってロシアは第一の貿易相手国であり、年末までにはNIS諸国間の自由貿易協定(ロシアとの統合色が強い関税同盟よりも緩い取り決め。関税同盟に加わりたくないウクライナなどのために、設けられている)に署名する構えを示している。またウズベク人の10人に1人は、ロシアに出稼ぎに出ているものと推計されている。

にもかかわらずウズベキスタンが、プーチン大統領の顔に泥を塗ってまでCSTOの参加を停止したのは、米国との協力から得られる利益が非常に大きいものと踏んでいるからなのか、ロシアがカリモフ大統領のいちばん警戒すること、つまり彼の権力維持と後継問題に介入したため(注:推測)としか思えない。あるいはカリモフ大統領は、2015年春の大統領選挙に向けて、ウズベク内政に干渉しないこと(「アラブの春」のようなことを仕掛けないこと)について、クリントン国務長官あたりから確かな感触を引き出したのかもしれない。

(5)カリモフ大統領は74歳であり、3月には上院が次の大統領選挙を2015年3月と定めた(2014年12月には総選挙)ので、彼が留任するのか否か、退くのであれば後継者は誰か、がこれからの最大の焦点となる。これをめぐっては報道が時々噴き出てはまた静かになるのだが、今回も3月下旬にまたそのようなことがあった。

3月21日にHarakat通信(中立系とされるが、背後関係は不明)が、「2月、グリナーラ(カリモフ大統領の長女。以前から、次期大統領になる野心があると喧伝されている)が大統領私邸でアジモフ第一副首相と会い、アジモフ大統領―グリナーラ首相の組み合わせで行くことで合意した」と報じたのが皮切りとなって(これはアジモフを持ち上げるどころか、つぶすことを目的とした報道と思われる)、3月25日独立系の記者Ezhkovは自身のサイトUzmetronomで、「2014年12月総選挙に向け、第1党の自由民主党は人事を入れ替える予定。このとき党首になる人物(すでに決まっているが)が大統領になるだろう」と書き、3月28日付Lenta.ruは、「後継者はミルジヨエフ首相と決まっているのだが、反カリモフの連中はアジモフ第1副首相の下に結集、国有資産を売却して買収資金にしようとしている。ダークホースとしては、カリモフ夫人の妹を母とするフェルガナの大実業家アクバル・アブドゥラエフを擬する者もいる。(これまでサマルカンド・クランとともに2大勢力を誇った)タシケント・クランは、3に分かれた。イナヤトフ国家保安庁長官、アジモフ第1副首相、そして2005年5月アンディジャン弾圧の立役者である国家保安庁次長のシュフラト・グリャモフ将軍である」と報じた。

だがこれら報道には、Ezhkovのものを除きガセネタの臭いがする。ウズベクでは、政敵を「大統領後継者」だとして故意に報道させ、カリモフ大統領にその「後継者」をつぶさせることもあるので、容易に信用できない。

(6)ウズベキスタンでは最近、国内で大きな利権の入れ替えが行われた兆候がある。
6月5日付Centrasia.ruは、ガフール・ラヒモフがウズベク国籍を放棄してロシア国籍を取ったという理由で、ウズベクのボクシング協会長位を剥奪され、世界連盟副協会長の地位も失ったと報道した。ラヒモフはウズベキスタンの有数の実業家で(マフィアだという報道もある)、2004年には大統領の長女グリナーラとの関係悪化が報じられている。ロシア国籍を取得したということは、既にウズベキスタンからは逃走したことを意味するのだろう。

 6月25日には携帯電話最大手、ロシアの携帯電話企業MTSの子会社Uzdunrobitaが立ち入り捜査を受け、財務部長Temirmalik Alimovが逮捕された。社長ベグゾド・アフメドフは、それまでに親族とともに国外逃亡していた。

カザフスタン
(1)6月9日プーチン大統領が、北京での上海協力機構首脳会議の帰途、カザフスタンに立ち寄った。ナザルバエフ大統領は「プーチン新大統領の最初の外遊先」にならんものと、5月末の訪問を招請したが、出足でベラルーシ、ウズベキスタンに出遅れて、NISでは3番目になってしまった(5月末にはメドベジェフ首相が来訪)。しかしそんなことは両国の関係にひびくものではなく、ウズベキスタンがCSTOへの「参加を停止」した後は、CSTOと「単一経済空間」(ロシア、ベラルーシとの関税同盟を人の往来にも及ぼした国際機関で、2015年からは「ユーラシア経済同盟」に衣替えの予定)におけるカザフスタンの重要性はいや増しである。プーチンの来訪では、20年前に結ばれた友好協力相互援助条約を改定した他、5件の文書に署名した。これによって、両国国民は外国人登録をせず滞在できる期間が30日間に伸びた。

(2)ナザルバエフ大統領はウズベキスタンのカリモフ大統領と、ソ連崩壊時からずっと大統領を務める、中央アジアではただ2人の首脳になってしまった(72歳)。彼についても、交代の話しはよく持ちあがるが、ウズベキスタンのようなクランの対抗関係は薄いし、以前野心を剥き出しにした娘婿アリーエフも国外放逐になったままなので、表面上は淡々としている。今のところの有力馬は、ナザルバエフ大統領のもう一人の娘婿チムール・クリバエフとマシモフ首相である。但しナザルバエフ大統領もレームダック化を嫌うし、彼の取り巻きも権力を保持して居たいので、後継への動きはなかなか本格化しない。ただ、クリバエフが昨年12月西部の石油都市ジャナオゼンで起きた暴動弾圧事件の責任を問われて国家福祉基金「サムルク・カジィナ」の総裁を解任されたあと、それ以上の責任追及の動きはなく、それ以外のポスト(ガスプロム取締役等)には残っていることは面白い。

(3)ナザルバエフ大統領は7月4日、経済政策を「リセット」すると宣言した。Centrasia.ruの記事の表題は、原油価格低落を見越しての緊縮政策であるかのように書いてあるが、中身に緊縮性は見えない。それよりも、国内の外資に対するカザフ側の資本参加率を増やせだの、政府機関は「国産車」を購入せよだの、外国企業にとっては好ましからぬ政策が散見される。大事なことは、リーマン・ブラザーズ不況から抜け出しつつあったカザフスタン経済だが、原油価格が低迷すればふたたび不況となる可能性が意識され始めたということだ。

(4)7月中にはロシアがWTOに加盟する運びとなりつつあるが、WTOに未加盟のカザフスタンはロシアと関税同盟を結んでいることで、一部品目の輸入関税率が下がる。6月10日のcentrasia.ruによると、カザフスタンがロシアと関税同盟を始めた時、ロシアに合わせて対外輸入関税を上げたものがあり、それは関税項目の47.7%に及んだそうだ(残りの45%は不変、5%は下がった)。このために食品、衣料、乗用車、機械の輸入価格が上がっていたのが、ロシアのWTO加盟で下がるだろうという話しである。加重平均で3%は下がり、乗用車は7年かけて25%から15%に下がるのだそうだ。もっともこの記事によると、これまでも輸入価格を低めに申告することで輸入関税はじゅうぶん「下げてある」のだそうで、実際の効果のほどは不明なのだそうだ。旧ソ連圏ではこうやって、表向きの話しと裏の話しがあるので、マスコミが騒ぎ立てる事態が起きても、当事者は涼しい顔をしていることが多い。

(5)カザフスタンがアフガニスタンに出兵の意志を明らかにして以来、カザフスタン国内ではイスラム・テロと思われる事件が相次いでいるのだが、この期間にもいくつか怪事件があった。5月28日にはアルマトイの遊園地の数か所で火の手があがったそうだし(29日centrasia.ru)、同30日にはアルマトイ付近の対中国国境で15名の警備兵が燃えたベッドの上で死体となって見つかった。ナザルバエフ大統領はこれはテロではないかとして、徹底的な捜査を命じたのだが、一人生き残った隊長による犯罪だという方向で幕が引かれようとしたところで、テレビ局のアナウンサーがそのニュースを読み上げるのを拒否して辞職する事件になった。その後のニュースには接していない。国境の向こうはウィグル人問題を抱える新疆だし、また国境を通り抜ける密輸も盛んな地方である。
 なおカザフスタンはアフガニスタンへの派兵は止めたが、カスピ海の港アクタウをNATO、米軍の補給・撤退のために提供する話が進行している。

キルギス
キルギスはいつもニュースは多いが、その動向が中央アジア情勢全般に影響するのは、中国、ロシア、米国の間での立ち位置を大きく変えた時くらいである。多数のニュースを振り分けると、主要な動きは次のようになるだろう。

(1)アタムバエフ大統領とババノフ首相の間のさや当て
昨年12月の大統領選で当選したアタムバエフとババノフ首相は、異なる政党の党首同士でもあり、一種の連立政権を組んでいる。ところが2010年に改正された憲法では議会制民主主義が標榜されたために、大統領の権限が縮小され、首相の権限が拡大され(知事の任命権等)、なおかつ両者の仕切りが明確でないところがある。4月20日ババノフ首相はロシアのコメルサント紙にインタビューしたが、そこではアタンバエフにほとんど言及することなく、外交問題についてもよどみなく答えている。今のところ両者の間に対立は見られないが、側近同士が利権奪取の闘争を行っているので、今後はわからない。

(2)アタムバエフ大統領はかねて親露派と言われていたが、昨年12月に訪露したあとは、「シベリアからカスピ海にかけての土地は昔、キルギス人のものだったのだ」等、ロシアに対してナショナリスティックで感情的な発言を繰り返した。おそらくセルジュコフ国防相との会談で、強圧的な対応を受けたのだろう。アタムバエフ大統領は感情の起伏が激しい人物と言われており、ロシアもことを荒立てないよう努めたが、3月にはキルギスとの帰化手続き簡素化協定を破棄すると声明、牽制の構えも示し始めた。ロシアに出稼ぎ、定住のキルギス人は多いため、これはアタムバエフにとって打撃となる。

また3月19日付イズベスチヤは、キルギス保安庁(KGBに相当)職員のうちロシア人、カザフ人、キルギス人数十名が解雇され、米国で訓練を受けたグルジア人に代わった、アタムバエフは「ロシア、カザフの諜報機関はキルギスの野党に資金を与えて情勢を不安定化させている」と非難している、旨報道している。これが事実であれば、アタムバエフはロシアが最も嫌うことを行ったことになる。ロシアは今のところキルギスに対し、年間100万トンにも及ぶ石油製品を低めの価格で輸出しているが、これに一般なみの輸出税をかければ、キルギス国内の情勢を直ちに不安定化させることができる。

なおロシアは、キルギスが関税同盟に入るよう求めてきたが、ババノフ首相は4月20日のコメルサント紙へのインタビューでこう答えている。「加盟申請は出した。しかし求めるべき免除措置を検討中。キルギスでは中央アジア最大の卸売市場で多数が働いている。関税同盟に入ると、商品の価格が上がるだけでなく、多くの失業がでる。国内に縫製企業を整え、雇用を吸収する必要がある」。中国から安い商品を仕入れては、中央アジア、ロシアに転売して利益を稼ぐことで、多くのキルギス人が生活しているが、ロシアとの関税同盟に入るとこれが駄目になりかねない、というのである。

(3)キルギスは山脈によって南北に分断されており、南部にはウズベク系民族も多数居住する。南部の主要都市オシュではキルギス人のMyrzakmatov市長が確固たる地位を築き(マスコミは、アフガニスタンからの麻薬流通を含む利権も抑えていると報じている)、中央政府はここに多額の補助金をつぎ込みつつも彼を従えることはできないでいる。アタムバエフ大統領は6月オシュを訪問したが、北部よりも南部に地盤を有するアタムバエフにとっては、Myrzakmatov市長は地元の大事な有力者で無下に扱えないといったところであろう。

だが同市長は自分もからむ建設利権にからむ市内再開発などでは、市内に多数を占めるウズベク系市民を迫害しがちであり、これが2010年6月のオシュ「暴動」事件の背景ともなった。キルギス政府は、南部に時限爆弾を抱えているようなものである。

(4)キルギスが山脈で南北に分断されていることを克服するため、ここに中国の援助で鉄道を建設する案が転がっている。3月9日付REGNUMによれば、中国がすでにFSをやり、48のトンネルと95の架橋建設が必要との結論を出した由。しかしキルギス国内では、中国からの融資の見返りに鉱山の利権を渡すのは問題だとか、中国の賄賂をもらった者がいるとの議論が大きくなり、検討は止まっている。

これについては面白い問題があって、中国の鉄道ゲージは中央アジアのソ連ゲージよりも狭いので、どちらに合わせるかが、中国軍がこの鉄道で中央アジアに侵入する場合の機動力を大きく左右するという議論がある。中国ゲージにすると、中国軍は新疆からウズベキスタンまで3-4時間で到達することができる。その昔ホレズム王国に殺到したジンギスカンの軍隊も顔色なしだ。

タジキスタン
タジキスタンはアフガニスタンと中国に隣接し、しかも経済力で劣っているので、大国の波間に翻弄されやすい。そして外界に出る鉄道2本はいずれもウズベキスタンを通る他、天然ガスの供給も依存しているため、ウズベキスタンからの圧力にも弱い。最近では中国がアフガニスタンのアイナク銅山の利権を得、北部アムダリヤで石油・ガスの探鉱も開始、さらにトルクメニスタンからアフガニスタン北部とタジキスタンを通って新疆に至る天然ガス・パイプラインの敷設をも策するに至って、タジキスタンは国際政治の前面にますます出てくるようになった。

(1)ロシアに依存しながら振り回すタジキスタン
タジキスタンはこれまで、ロシアの強い影響下にあった。ロシアは1990年代から第201師団を常駐させ、2005年まではアフガニスタンとの国境警備も請け負っていた。傍らから見れば、タジキスタンはロシアへの依存度大なのだが、旧ソ連圏小国のならいでタジキスタンも尻尾が犬をふりまわすがごとく、諸大国とわたりをつけてはロシアに見せびらかし、最後にはロシアから援助をせびり取ることを繰り返してきた。

現在ラフモン大統領がしかけているゲームは、中国から融資をほしいままに引き出してはインフラを作らせ、中国の攻勢にあせるロシアから様々な恩恵を引き出す、米国も適当にゲームに引き込んでおく、というものである。ロシアの第201師団は、将来アフガニスタンからの脅威に対する盾になるだろうにもかかわらず、2014年に切れる駐留協定の改定交渉では、毎年3億ドルの支払いをロシアから求めて動こうとしない(6月28日付centrasia.ru)。また、ロシアが49年間の協定更新を求めているのに対して、タジク側は5~7年ごとの更新を主張しているようである(6月26日付mn.ru)。

タジキスタンも、文明的に全く異質な中国の支配下に置かれるのは嫌だろうから、最後にはロシアと妥協をするだろうが、それまでは米国に基地を提供してみせる等、様々なしかけをしてくることだろう。因みに、米軍はタジキスタンとアフガニスタンの間を流れるピャンジ川に橋をかけ、アフガンへ物資を持ち込むルートとしているが、6月4日NATOが結んだ、中央アジア経由の「北方輸送路」をアフガンからの撤退用、つまり逆向きにも使うことについての合意を、タジキスタンは結んでいない。

 また、タジキスタンの首都ドシャンベを外界に結ぶ鉄道はウズベキスタンを経由するのだが、昨年末以来ウズベキスタンが急遽「修理」を始めたために、この鉄道は使えなくなっているようだ。この鉄道はタジキスタンの外貨の多くを稼ぎ出す「タジク・アルミ」社にとってボーキサイト搬入と、アルミ製品搬出のための生命線であるばかりでなく、ロシアの第201師団にとっても補給路なのである。

(2)中国の融資漬けになったタジキスタン
輸出入銀行を持っている国々(日本ではJBIC)は、融資を与えてはそれで自国の産品を買わせる。これを放置すると競争になって、融資条件は限りなく利子率ゼロに近づく。こうした過当競争を防ぐため、OECDの先進国は輸出信用についての紳士取り決めを作って、利子率、返済期間等を規制している。

ところが中国はOECD加盟国でもないために、この縛りを受けていないし、ODAを供与する義務もない。ODA並みの優遇条件で、輸出信用を与えることができる。だから貿易黒字が貯まりだした2000年代から、中国は世界を相手に「融資」をばらまき、それを名刺代わりに政治的な影響力も拡大し始めた。ウクライナやリトアニアのような遠方の国々にも「融資」をオファーしているのである。その様は、かつての日本の「小切手外交」を表面だけまねたものに見える。

なぜ表面だけかと言うと、日本の輸出信用や円借款は、供与の前には調査団が何度も赴いてフィージビリティー調査を徹底的に行い、また入札においても不正を防止、さらには「アンタイuntie化」を進めて、現地の建設企業や第三国の企業にも利益が回るよう按配してある。これに対して、中国が「融資」をすると、中国の建設会社が中国の労務者を連れて大挙して乗り込み、中国の製品だけを使ってトンネルや橋を作りあげるのである。そのトンネルや橋の耐久性は保証の限りではないが、融資の返済義務だけは相手にしっかり残る。

これは言ってみれば、中国政府が海外で公共投資をしているようなもので、作ったものは海外に残るが、建設の利益は中国がほぼ100%手に入れ、そのつけは外国政府が返済するという、やり方なのだ。だが社会主義経済の国では、融資は返済しないことが多い。ソ連でもそうだったし、中国でもそうだった。そして中国では今でも、銀行融資の滞納や帳消しは珍しいことではない。タジキスタンはロシアに対しても融資返済を滞納しているし、中国に対してもこれから滞納と帳消しを繰り返していくだろう。中国もそれは先刻ご承知、あぶく銭でタジキスタンに影響力を拡大し、自国企業が利益をあげれば、それで十分目的は果たした、と言えるのだろう。

そういうわけでタジキスタンは、アフリカとならんで今や「中国の融資」が最も目立つ国となっている(2009年9月には、交通違反の中国建設会社トラックが、ロシア軍のトラックにぶつかってロシア兵4名が死亡するという事故が起きたが[Jamestownニュースレター]、これは象徴的な話である)。中央アジアの中でもそれは群を抜いていて、同じように中国に隣接、かつ経済力も小さいキルギスがこの点で禁欲しているように見えるのと好対照である。おそらくキルギスの場合、ロシアあたりから圧力を受けているのではないか。優遇価格で原油をロシアから輸入しているキルギスは、ロシアに頭が上がらない。他方タジキスタンはキルギスからそのロシア原油を手に入れることで凌いでいるので、ロシアに頭を下げる必要がないのかもしれない。
(但しキルギスも、この6月に訪中したアタムバエフ大統領が約4億ドルの融資を受けて、キルギス南北を結ぶ高圧線を建設する案件に踏み切った。ただタジキスタンと異なり、諸政党が入り乱れるキルギスの議会では、「中国からの融資」は常に政争の対象となる)

かくてタジキスタンは短時日の間に、10億ドル分もの融資を中国から受けるに至った。タジキスタンのGDPは約55億ドルなので、日本で言えば100兆円強の融資を中国一国から得ている、という感じになる。タジキスタンではこれまでアジア開発銀行、ロシア、イラン、パキスタン(アガ・ハーンという宗教指導者が核)、米国、日本などが援助・融資を行ってきたが、中国の割り込みぶりはすさまじく、タジクをすっかり席巻してしまった。IMFや世界銀行は、ここまで借金を増やしたタジキスタンに、他の国が融資を与えることを止めているはずである。タジキスタンで、円借款を使って大規模なインフラを建設することは、当面不可能になってしまった。

(3)中国からの融資倍増
ところがラフモン大統領は6月初旬、中国を国賓訪問(上海協力機構首脳会議に出席するのを兼ね、5日間)し、10案件に成約してこれに10億ドル相当の融資を受けて帰ってきたのだ。中国からの融資累積額はこれで倍増し、対外債務の70%は対中国になってしまった。10案件の中には6億ドルのセメント工場、2億ドルのドシャンベ石炭火力発電所、石油・ガスの探鉱、タジキスタンと中国を結ぶ道路の改修などがある。

 ラフモン大統領の夢は、ドシャンベ東方のログン・ダムを完成することだ。これは300メートルもの高さのロック・フィル・ダムを作り、その電気でアルミニウムを大増産して外貨を稼ぐというプロジェクトのようだ。しかし地震多発地帯に300メートルもの高さのロック・フィル・ダムを作ることの危険性もさることながら、夏には下流アムダリヤの水を多用する綿花畑を多く抱えるウズベキスタンは、水量調整をタジキスタンに握られてしまう(但しログン・ダムが建てられる川は、アムダリヤの水量の半分以下しか供給していない)のを嫌って、国際的なキャンペーンを張っている。さすがの中国も、このログンダム建設では名が出てこないので、おそらくウズベクの立場を慮っているのだろう。

(4)タジキスタンからアフガニスタンへの鉄道建設
4月、Jamestownのニュースレターは、キルギスからタジキスタン、アフガニスタンを抜けてイランへとつながる鉄道が建設中で、すでに638キロ建設されたと報じている。これまではアフガニスタンでの鉄道と言えば、北部マザリシャリフとウズベキスタンを結ぶものしかないと思っていたが、Wikipediaで調べてみると、最近のアフガニスタンではマザリシャリフからカブールを通ってパキスタンへと抜ける鉄道を2014年までに中国が完成する予定であったり、トルクメニスタンからアフガニスタン、イランからアフガニスタンへの鉄道が建設中であることになっている。どこまで事実なのかはわからないが、鉄道建設はアフガニスタンの経済開発を大いに進めることだろう。

面白いことは、アフガニスタン周辺国の鉄道のゲージはまちまちで、中国、中央アジア、インドの順に広くなっていく。Wikipediaは、中国の軌道で統一することで合意ができたと書いているが、これが事実とすればインドにとっては面白くないことだろう。

トルクメニスタン
(1)中国向け天然ガス増量の構え

6月のJamestownニュースレターによると、上海協力機構首脳会議の際ベルディムハメドフ大統領は胡錦濤国家主席と会談し、中国向け天然ガスを年間650億立米まで増量することで合意した(時期は不明)。これまでは2014年までに300億立米とする目標が掲げられていたので、倍増以上の話となる。現在のパイプラインでは年間400億立米が限度なので、追加分250億立米については別のパイプラインを作る必要が出てくる。

(2)だがトルクメニスタンはアフガニスタン、パキスタンを経由してインドに至るパイプラインを建設する計画を以前から持っている(TAPIパイプライン)。アフガニスタンとパキスタンの国境が無政府地帯で危険なために、この案件はいっこうに動かないのだが、だからと言って中国がすべてを持っていく構えを示したことは、中国の友好国パキスタンさえも怒らせたようだ。TAPI向けに予定されているのは、年間330億立米の由。

(3)トルクメニスタン人もテロを

これまでトルクメニスタン人によるテロなど聞いたことがなかったが、2月27日のcentrasia.ruによると、パキスタン北部のバジリスタンで21名のテロリストが殺された際、うち14名はトルクメン人であることが判明したそうだ。これらテロリストは、NATO軍に対してだけではなく、パキスタン軍にも敵対していた。
アフガニスタン北部にはトルクメン人も居住している他、1990年代半ばには、トルクメン軍はタリバンと国境で50回ほど戦闘を繰り返した由(12.uz)。

(4)Abadan市再建
昨年7月、ソ連時代からの火薬庫爆発で数百名が死亡したと伝えられるアシハバード近郊の町アバダンは、近くの更地に再建されることになったようで、5月には入札が始まった(5月10日付centrasia.ru)。日本企業は気を付けた方がいいだろう。と言うのも、アシハバード等の諸建設案件をめぐっては昨年5月、トルコの建設企業が約10億ドルの代金を得ていないとして、トルクメン訪問を間近にひかえるギュル大統領にねじこんだ事件があるからだ(ギュル大統領から電話を受けたベルディムハメドフ大統領は逆ギレしたと、報道にはある)。

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