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世界はこう変わる

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2011年6月11日

ロシアのロマン ポノマリョーヴァ絶唱

1週間ほど前に、ロシアはスケールの大きい自然と感情の振幅の大きい人間に恵まれた土地だと書いた。だんだんロシア旅行の日が迫っているので、昔の思い出に耽っている。カネではなく、まだ人間が世界の中心にいた頃の。

何がロシアにロマンだ、と思う方は、http://www.youtube.com/watch?v=v2XbVEN795o&feature=relatedを聴いて見てください。

これはジプシー(ローマ)系ロシア女性、ヴァレンチーナ・ポノマリョーヴァの歌「あなたとの別れに歌う」(А на последок я скажу)だ。このYoutubeは1983年、ゴルバチョフ登場前の停滞したソ連で出た素晴らしい映画「絶唱」(Жестокий романс リャザノフ監督)からで、歌っているかに見えるのは女優ラリーサ・グゼーエヴァ。ポノマリョーヴァは声で出演している。

この美しい歌――あなたとの別れに言うわ、あなたは私を殺したの、でもなんて中途半端な殺し方なの――がいっそう感動的なのは、この画面で二つの恋が絡み合っているからだ。一つは映画の話し。グゼーエヴァが演ずる貧乏貴族の娘がヴォルガ川の船長に恋して捨てられる話し。もう一つは声で出演しているポノマリョーヴァが、この船長を演ずる有名な俳優兼監督のニキータ・ミハルコフにかつて恋して別れた実話だ。

この船長はけた外れの男で(ミハルコフにもそんなところがある)、19世紀末水運が盛んになったヴォルガ川でまだ珍しい蒸気船を操る。最後には他の蒸気船とスピード争いを繰り広げ、釜の炊き過ぎで暴発して船ごと吹き飛んでしまう、いかにもロシアならではの豪快な話し。

そんなことがあるはずないと思うかもしれないが、ロシア革命前後のモスクワなどを描いたこれもけた外れの作家、ギリャロフスキーによれば、実話なのだ。この作家、モスクワの貧民街ヒトロフカを描き、ある部屋を掃除したところ、切り取られた片足だけが入っている長靴が出てきたとか、ボリショイ劇場横を暗渠で流れるネグリンナヤ川にもぐりこんでみたら死体がいくつも流れていたとか、なんでもありのロシアの世界を語って興味が尽きない。

右肩上がりの成長のなかで、経済とカネの話しかしてこなかった日本でも、これだけ生活が厳しくなってくると、そろそろまた文学とか演歌だかが復活する時代になってきただろう。それならば、ロシアを忘れる手はない。あそここそは、抑えの利かない人間の感情が渦巻くるつぼだからだ。

(小説「遥かなる大地」も、そのようなロシアの大河ロマンです。熊野洋はペンネーム。
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コメント

投稿者: 新井(モスクワ) | 2011年6月14日 19:46

河東さん、

ヴァレンチーナ・ポノマリョーヴァの歌、久々に聴くきっかけをいただきありがとうございます。しみじみと聴かせていただきました。同じYouTubeでアルメニア・クルド系のЗара version (http://www.youtube.com/watch?v=Np5OrFVnH9c&feature=related)も聴きましたが、こちらも良いですね。

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