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世界はこう変わる

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2017年2月11日

AIとロボットでGDPは倍増するのか

(これは1月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

 AIとロボットの発達、普及が生む効果については、両極端の二つの議論が行われている。一つはAIとロボットが人間の職を奪い、大量の失業が発生するというもの。そしてもう一つはAIとロボットがほぼ無限の生産増を可能とすることで、人間は働かなくともすむ共産主義社会が到来するというもの。

どちらも極端で、信じがたいところがあるが、ここでは後者の立場に近い試算結果"Why Artificial Intelligence is the Future of Growth"(David Lehrer, CEO, CONATIX)を紹介する。これは、Accenture社のサイトに掲載されている(https://www.accenture.com/t20161031T154852__w__/us-en/_acnmedia/PDF-33/Accenture-Why-AI-is-the-Future-of-Growth.PDF#zoom=50)。

 要点は次のようにまとめることができる。
・AIは資本と労働のハイブリッドという点で、新しい経済要素。
・既存の労働力、資本を駆逐するのでなく、これらをより効率的に利用できるようにする。
たとえばFANUCはCiscoと組んで、設備の空き時間をなくすFanuc Intelligent Edge Link and Drive(FIELD)を開発している。

・AIは新たな労働力となるだけでなく、既存の労働力の技術と能力を向上させる。そして、学習能力(AIは自らの足らぬところを自覚して、自ら知識を取得することができる)を持っているが故に自ら技術革新を創造できる。

12の先進国では、2035年までにAIが成長率を2倍にする(各国で人間の雇用が不変と仮定して)。米国では、2035年までに8、3兆ドルのGDPを付加し得る。2035年までに米国の成長率は4、6%になり得る。
日本の成長率は3倍以上になる。現在の0、8%は2035年までに2、7%
になろう。

高い順に言うと、米国の次がフィンランドで4、1%、英国が3、9%、スウェーデンが3、6%、オランダが3、2%、ドイツが1、4%から3、0%へ。フランスは2、9%。イタリア、スペインでの効果は薄れ、それぞれ1、8%、2、5%。

・労働生産性で言うと、スウェーデンが37%の上昇で一位、フィンランド36%、米国35%、日本34%、オーストリア30%、ドイツ29%、オランダ27%、英国25%、フランス20%の上昇。

米国GDPは約25年で倍増。英国は30年、ドイツは45年、フランスは40年、日本は80年、イタリアは70年で倍増

・AIというと、人間が失業することばかり考えるが、AIが新しい製品、サービス、イノベーションを生むことの効果の方が大きいだろう。

・必要なことは教育。政府が、AIが生むネガティブな側面の予測と防止に心がける。特に失業の多くなる部門の要員の再教育に心がける。
 
と、まあこんな具合で、かなり原始的な推論である。と言うのは、自ら断っているように、「雇用に変化がない」、つまり消費規模に変化がないことを前提にしているからである。もしロボットのせいで失業が増えて、ロボットが作ったものを人間が買えないようになると、ロボットが作ったものは無価値、つまり付加価値を生まないからGDPの中に算入されないのである。

 もし政府が国民にお札を配り、消費を奨励すれば、経済はまわる。ただそうなると、ロボットに「職を与える」ために経済を回すような話になり、それならロボットの数を減らしたら? という話しになって、何が何やらわからなくなってくる。一層のこと、ロボットの作るモノ、そしてサービスは無料にする? そうすれば、「欲しいものは欲しいだけ手に入れることができる」という共産主義社会が到来し、人間は勉強の努力をする必要がなくなる。でも、本当にそんなことはあり得るのだろうか?
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