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世界はこう変わる

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2016年12月23日

世界のメルトダウン その27 理念の時代から情念の時代へ 法律の域外適用 それは国際的独裁か、それとも世界国家への道なのか

 (13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第27回)

法律の域外適用――それは国際的独裁か、それとも世界国家への道なのか

二〇一五年五月、スイスにある国際サッカー連盟の幹部七名が、収賄、マネーロンダリング等の容疑で逮捕された。同連盟幹部の動きは米国FBIが数年に渡って捜査を進め、フロリダ州の米銀行を使っての不正行為の証拠をつかむに至り、米国政府は同七月、幹部七名を米国に送還するよう、スイス政府に要請を行った。米国の裁判所で裁こうというのである。スイスにも裁判所はあるのに、どうしてこのような立ち入ったことができるのか、スイスに主権はないのか。こう思う人も多いだろう。

しかしこれは、米国とスイスの間では合法的なのである。両国が捜査や犯罪人の逮捕、引き渡しで協力することを定めた司法共助協定を結んでいるからである。しかしこの件が象徴するように、この頃、米国が海外にいる外国人に自国の国内法を適用する例が増えている。典型例は「コンプライアンス」である。これは、米国の企業に贈賄等、海外での不正行動を禁じ、公正な競争を保全しようとする法律のことなのだが、米国はこれを外国の企業にもあてはめ、外国Aの企業Bが途上国Cで贈賄によって成約したことが明らかになれば、企業Bの米国内における操業を禁じてしまうのである。企業Bは、世界最大市場の米国から締め出されるのを恐れて、途上国Cでの行動を控えるようになる。これは、一見文句を言えない措置のように見えるが、国際法上は少し無理がある。と言うのは、企業Bの途上国Cにおける行動を律するのは、途上国C、そして企業Bの本国Aの法律であるのが自然だからである。

それに、もっと下世話なことを言えば、途上国や一部の元社会主義国では賄賂なしに商談をするのは難しい。不可能とも言える。コンプライアンスに縛られていない中国などの企業が商談をさらっていってしまうし、欧米の企業も蔭では何をやっているかわかったものではない。

大市場米国を使わせるか使わせないか、これを梃子にして外国企業を自国法で規制する例は、他にもいくつかある。例えば独占禁止法を悪用して、他国の大企業の発展を妨げる例がある。二〇一五年四月、米国司法省は半導体製造装置の大手同士、米国のアプライド・マテリアルズ社と日本の東京エレクトロン社の合併を認めないとの決定を下した。両社はこれを無視することができるが、そうすると合併した新社は米国国内でのビジネスは認められず、米国という大市場を失うのである。これは、韓国のサムソン、台湾のTCMS等、両社の合併によって半導体製造装置への価格支配力を失うことを危惧した勢力からの働きかけによるものと言われ、業界世界三位の東京エレクトロンは得るべき利益を大きく失ったのである。

反独占法を使って外国企業を律することは、中国もEUもやっている。例えば中国の商務部独占禁止局は二〇一三年四月、丸紅による米国の大手穀物商ガビロンの買収について、「大豆市場で競争の排除や制限を生む恐れがある」と判断、中国との取り引きについては両社の統合を認めないという裁定を下した。中国は世界の大豆輸入総量の六割を占めるが、丸紅は既にそのうちの二割のシェアを抑え、首位にある。この上ガビロンと合併して中国市場を牛耳られると、中国にとっては食糧面での安全保障に響くと判断したのだろう。中国の独占禁止局は日本企業を狙い撃ちにしているわけではなく、米国のコカ・コーラが中国の飲料大手を吸収合併しようとした時も、これを禁止している。大市場を自ら持つ国は、こういうことができるので、日本が同じことをやっても(やろうと思えばできる)、日本市場は外国人にとって小さいので、彼らは無視して世界中で活動、日本市場だけ除外するだけの話しである。

米国企業が自国の法律を使って、他国の企業に嫌がらせをする例もある。一つはディスカバリーと呼ばれる制度である。企業Aが別の企業Bに権利を侵害されたとしてBを米国の裁判所に訴える。すると企業Aは裁判所を通じて企業Bに、訴訟事案に関係する資料すべての供覧を要求することができる。Bが都合の悪い資料を隠し、それが暴露すると罰を食らう。企業Bが外国企業ならば、資料提出の要求を拒絶することもできるが、その場合、米国でのビジネスを禁じられることになる。こうして米国法は外国企業Bにも適用されることになるのである。まあ、この場合は、企業Bの米国企業Aに対する米国内での行いが裁判されているので、米国法が適用されるのも自然なのだが、日本に本社を置く企業Bの電子メールなどを当然のようにしてごっそり持ち去られるのは、釈然としないところがある。

同じ伝で、「パテント・トロール」と呼ばれる行為もある。これは屑のようなパテントを買い集めた上で、国内、あるいは外国の企業の製品が自社保有のパテントに違反しているとして訴訟し、法外な賠償金を得る行為のことである。これらの訴訟は、米国でだぶつき気味の弁護士達にとって、格好の収入源になっている。パテント訴訟をする側も弁護士、これを受けて立つ側も米国弁護士が代行する例が多く、まさに法的なマッチ・ポンプが行われている。国際的な抑制措置が必要であろう。
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