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世界はこう変わる

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2016年11月 4日

世界のメルトダウン その20  理念の時代から情念の時代へ 貪欲・驕り・無教養

(13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第20 回)

その四・理念の時代から情念の時代へ-貪欲・驕り・無教養

 冷戦の終了で、米国の力だけが世界で突出し、「世界の警察官」と言われるほど頼りにされる存在となった。何度も言うように紛争は、本来国際連合が防止し、解決するべきものなのだが、安保理常任理事国(米ロ中英仏の五カ国で、P5と呼ばれる)が意見の一致を見ることが稀で、国連を動けないようにしているため、米国が頼りにされるのである。この世界には欧州、中東、そして東アジアという「紛争の三大巣」があるが、ここではそれぞれNATO諸国、イスラエルとサウジ・アラビア、そして日本が、米軍の助けを求めて張り合っている、と言っていい。もしかすると、米国という国家――それ自体で一つの多民族世界を形成している――を核に、世界国家を作れるのではないか。

 しかし世界国家の核になるのであれば、米国は公平無私でなければならない。ところが現実は、米国人、米国企業が自分の野心や利益を実現するために米国の力を悪用するケースが多い。二〇〇三年のイラク戦争も、ネオコンの野心の結果生じたものと言っていいだろうが、この戦争のための軍事費支出は米国内のカネあまりを助長し、二〇〇八年のリーマン・ショックを生んで世界の経済を麻痺させた。だがその蔭で、米国金融企業の幹部達は法外な年収を貪り続けていた。ソ連という対抗勢力がなくなった今、米国の一部の者たちは何にも気兼ねすることなく、自身の貪欲を追求し始めたのである。冷戦においては資本主義、共産主義という理念の相克が国際政治の前面に出ていたが、それのなくなった冷戦後は、人間の欲望、つまりむき出しの貪欲、傲りが国際情勢の主要動因として前面に出てきた、と言えよう。
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