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世界はこう変わる

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2016年10月27日

世界のメルトダウン その18 国際紛争の新たなactor達6 主権国家の暴力装置・特殊部隊の海外派遣

(13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第18 回)

主権国家の暴力装置・特殊部隊の海外派遣

二〇一一年五月、米国海軍特殊部隊Navy SEALsはパキスタン政府に通報することもなく(通報すれば妨害されただろうから)、ヘリコプターでパキスタン領内深く進入、軍都アボッターバードに降下して、隠れていた国際テロリストのビン・ラディンを殺害した。これは国際法的には武力侵入と同じことなのだが、パキスタン政府は口頭での抗議だけですませた。力関係で米国に及ばないし、それまでビン・ラディンを実質的に匿っていたことに対する米国世論の怒りを恐れたこともあったのだろう。

相手国の了解を得た上で特殊部隊を派遣、テロリストを殲滅する例は、他にもいくつかある。例えば一九七七年十月、西ドイツの航空機がハイジャックされ、ソマリアのモガディシオ空港に降り立ったことがあるが、当時のシュミット首相はソマリア政府の了承を得て国境警備隊の特殊部隊を派遣、見事に乗客の解放に成功している。日本も同様の特殊部隊を持っているので、いつかはこれが海外で(もちろん先方政府の了解を得た上で)活躍する時が来るだろう。

テロの関係でもう一つ、論じておかないといけないのは、テロ(不特定の市民を殺傷して恐怖感を醸成すること)を外交の手段として用いる国家が世界にはあるということである。金正日総書記の時代の北朝鮮は日本人を拉致したり、ミャンマーで韓国要人の一行を爆破したり、悪逆の限りを尽くしたし、パキスタンはイスラム原理主義者を養成してはアフガニスタンに送り込んで権力を握らせたり(タリバン)、インドに送り込んでテロを働かせたりしたのである。

そして工作要員を外国に密かに送り込み、あるいは現地人を養成して特定の人物を暗殺させることは、古来頻繁に行われてきた。戦前は、スターリンの政敵トロツキーが、亡命先のメキシコで刺客に殺された事件が有名だし、最近ではロシアの元公安機関職員アレクサンドル・リトヴィネンコが英国に亡命してプーチン政権批判を始めると、何者かによって毒殺された(と報道されている)。これらのケースでは、暗殺が行われた国の主権が冒されたことになるのだが、多くの場合はこの工作員個人にかかわる刑事案件として処理される。


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