Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2018年6月29日

メルマガ 文明の万華鏡第74号発行

毎月「まぐまぐ」社から発行しているメルマガ「文明の万華鏡」第74号が出ました。
評論活動を支えるものとして厖大なデータベースを作っていますし、このブログの中国語翻訳にも費用がかかります。メルマガはその費用を少しでも支弁するため、月365円の有料にさせていただいております。講読いただける方は、http://www.japan-world-trends.com/ja/subscribe.phpにて手続きいただけます。ここでは、6月の国際情勢のまとめとして、「まえがき」の部分を紹介させていただきます。

まえがき
この1カ月、最大のイベントは米朝首脳会談でしたが、大した進展もなく、結局はトランプの政治宣伝に使われてあとはこれから、ということになっています。トランプは同じような、「米国に歯をむく者をおとなしくさせる」ことを、プーチンを相手に仕組もうとしていて、7月にでも米ロ首脳会談をする構えでいます。こうやって、「米国への脅威を除いた」ことを中間選挙での売り物にしようというのでしょう。

その間、G7首脳会議ではトランプが袋叩きにあったように見えましたし、ほぼ同時に青島で開かれた上海協力機構首脳会議は、インド、パキスタンを正式加盟国として迎え、中国の威勢を示したように見えました。

しかし当面、世界では米国独壇場の状況が続いていることを見逃してはならないと思います。米国衰退が言われる中で、「米国を政府とする世界国家」化が進展しているように見えます。米国が、ロシアに対しても中国に対しても、制裁を独断で導入すれば、第三国もこれに従わざるを得ないという状況が生じています。制裁に違反する企業には、米国法に則って法外な罰金を課したり(米国でも操業している企業はそうなります)、米国企業との取引を禁じる、つまり米国の銀行との取引を禁じることで、ドル決済ができない、つまり外国貿易がほとんどできない状況に追い込むことができるからです。

前者は、「米国内法の海外適用」というもので、国際法違反ではないでしょう。なぜなら、「米国内法に従わないなら、米国でのビジネスはやらせない」という、至極もっともな論理に基づくものだからです。後者も、国際法に違反するものではなく、それでも例えば4月、米国の銀行との取引を禁じられたロシアの世界的アルミ大手の「ルスアル」社は、世界への輸出ができなくなり、ロシア政府に救済を求めて泣きついています。

同じようなことは、これから米中の間で頻発してくるでしょう。特にこれからは、中国に先端技術・機械機器を輸出する時、米国の規制に反しないよう、気を付けないといけません。いくら日本の法制(輸出貿易管理令)を守って輸出しても、米国の規制に違反していて、しかも米国とのビジネスも手広くやっているような企業は、法外な罰金を支払わされる可能性があります。

こうした米国の力を示すものは、習近平がトランプの圧力に対して、沈黙を貫いているということです。どうせ敵わないので、声をあげて叩き潰される恥をかきたくないのでしょう。22日付けの環球時報の社説はまさに、そうしたことを書いて、隠忍自重を呼びかけています

もう一つ、この半年で、ロシアの手持ちの米国債が半分に減少、4月には約470億ドルにまで落ちたことが判明したことが面白いことです。2011年には1500億ドル持っていました。これでロシアは米国債保有の外国国家としては22位に後退しました。制裁の一環として差し押さえられるのを嫌ったのでしょうが、幸か不幸かロシアの売却は米国債市況に殆ど響くことはなく――ただこの半年、米長期金利が時々小幅ながら急上昇する局面がありましたが、すぐ収まっています――、またロシアが代わって買い込んだであろう金の価格にも影響することなく、終わってしまいました。

今月の目次は次の通りです。

 政高官低のバランスを求めて
 中国経済変調
 日米安保締結における天皇の役割
 日本の国債をめぐる基本的な誤謬
 シェア・エコノミーの台頭
  ――GDPに代わる指標の必要性、ますます大きく――
 「経済のカギ」でなくなる製造業?
 あまり報道されていないニュース
  1)中国のAIIB(アジア・インフラ投資銀行)
  2)アルメニアをめぐる風雲急
 随筆:HJ LIMという韓国女流新進ピアニスト

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