Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2020年12月11日

ソ連社会主義は73年で崩壊 中国は

(これは11月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第103号の一部です)

中国は、昨年10月の国慶節で中華人民共和国建国70周年を盛大に祝ったが、来年7月23日東京オリンピック開幕の日は中国共産党結党100周年記念日にあたる(これはオリンピックの方が後から割り込んだのだ)。ソ連共産党が1919年の襲名から72年で崩壊したことと引き比べると、中国、そして中国共産党の賞味期限が気にかかる。

ソ連は、集権主義の経済体制では成長を維持できなかったがために崩壊した。中国も国営企業中心の経済を維持してきたが、ソ連との決定的な違いは外国の資本と技術が湯水のように流れ込んできたということだ。1990年代央から台湾・香港・華僑・日米欧の資本・技術を年間40兆円相当以上(2000年代)取り入れて(貿易黒字と直接投資)急成長した国だが、そのモデルは2008年のリーマン危機とトランプの高関税で破綻した。今では中国資本でさえ海外での生産を進め、中央は双循環(内需大循環と国際大循環)と称するものの実際は内需を核とした成長の維持を策する。

 しかし中国経済はまだいびつで、経済を引っ張るべき個人消費はGDPの40%弱しかない。米国の個人消費はGDPの70%弱なので、中国の個人消費額は名目で米国の2.6分の1でしかない。だから世界2位の経済(名目GDPで米国の65%)を内需で回すためには、公共投資に大きく依存せざるを得ないのだ。
 
 中国の土地は全部国有・公有なので、これの「使用権」(所有権ではない)を切り売りし、そこに道路とかオフィス・ビルとかマンションとかを建設していくことで、見かけ上の「成長」を演出することができる。しかしこれでは、RCEPが「なんちゃったって」自由貿易協定であるのと同じく、「なんちゃったって」成長でしかない。

 そして習近平は文革時代に農村に下放され、毛沢東主義を徹底的に叩き込まれているから、現代の経済を運営するためには「?」がつく人物なのだ。彼は、経済の国営化、集権化の効用、必要性を信じ切っているようだ。

 大手の民営企業は共産党の方針にいろいろ抵抗してくるので、習近平は基本的には敵対的だ。だからファーウェイに対しても助けの手を差し伸べないし、3日には上海・香港で「世紀最大の」上場を策していたアント・グループの上場を差し止めている。これはアント・グループの実質的な創立者で、かの電子取引世界最大手の「アリババ」を創業した馬雲が、10月24日上海で行われた経済関係のシンポジウムで政府の金融政策を揶揄したためとされるが、この会合での基調講演を、かつて習近平の盟友で、最近では敵陣営にくらがえした感のある王岐山・国家副主席が行い(現代ビジネス所収、近藤大介筆記事 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77210)、あたかも馬雲をあおるかのように自由化・開放を称揚したことの方が、インパクトは大きかったのではあるまいか?

 ファーウェイ、アントに続いて、中国の半導体産業の先頭を走る紫光集団(国営)が15日、13億元(200億円強)相当の社債をデフォルトしたことも、中国経済の今後を示唆する不吉なニュースだ。米国が半導体技術の対中輸出を大きく制限する中で(バイデンになっても、制限措置の多くは維持されるだろう)、紫光集団は国産半導体製造の旗手として大いに期待されていたからだ。

 習近平は10月14日、先端技術、ベンチャー企業のメッカ、深圳を訪れて見えを切っているが、その心は深圳のベンチャー精神を中国全土に広げることより、深圳に共産党と国の力を及ぼすことにあったのではないか。それでは、深圳の活力を絞め殺してしまう。
 
 中国は現在、年間40兆円相当の財政赤字を垂れ流す。そのために国債を増発しつつあり、これを外国人が既に2500億ドル程度購買している。人民元を国際資本取引に用いることはまだ認められていないが(別の言葉で言えば、人民元の交換性は非常に限定されたものなのだ)、この国債取引で人民元が国際資本取引に実質的に用いられるようになっている。外国人が中国国債を一斉に手放したりすると、中国から外資が一斉に流出したのと同じことになって、人民元は暴落することになる。

 この関連で、筆者が現場に居合わせた1998年8月のロシア国債大暴落とデフォルトを思い出す。この時ロシアは石油生産国であることを実質的な担保として、国債を海外で大量に発行。しまいには新規国債を担保に入れるということまでして、「国債ネズミ講」を演出。あげくの果て、デフォルトに陥って、通貨ルーブルの価値を6分の1に減らし、1年半後のエリツィン退陣につながったのだ。今の中国は何を担保にできるというのか? そのような中国国債を買い進み、値段をつり上げていく外資は無責任ではないのか?

 で、言いたかったことは、中国は不良債権やデフォルトの増加が示すように、「社会主義経済の寿命は70年がせいぜい」のジンクスを破れないのでは、ということ。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/4047