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世界はこう変わる

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2011年4月16日

2011年3月アメリカの印象9ーーアフガニスタンでも中国の助力?

アメリカの外交における当面の重要事項として、アフガニスタンからの撤兵実現がある。これについて、ワシントンでの雰囲気はどうだったか?

アフガニスタンからは当面抜けられない
アフガニスタンから米軍、NATOのISAFがいつ撤兵するかは、もっぱらアフガニスタン国内情勢が落ち着くかどうかの観点から議論されているが、ワシントンのロビーストたちにとってそれは、ワシントンの政治情勢が決する問題なのだ。オバマ大統領は本年撤兵を開始して2014年までには任務を現地政府に移行すると公言したが、これによってアフガニスタン情勢が以前の混乱に戻りでもしようものなら、大統領選において共和党のいい攻撃材料になってしまう。

中近東諸国の「民主化」運動にしても、これには米国政党系のNPOも絡んでいるようだから(2000年代後半、ウクライナ、グルジア等で続発した「色つき革命」では、欧米NPOによる「民主化指南」が大きな役割を果たしたが、その後は「民主派」陣営内で権力闘争が絶えなかったり、利権の入れ替えで終わっている)、介入すべきかどうかはワシントンの国内政治の問題になってしまう。NPOはその国の「民主化」を実現したかどうかで、その後集まる寄付金の額が違ってくるから、力が入る。自分達の職がかかっているのだ。

これはよくアメリカの裏外交(second-track diplomacy)などと言われるが、古典的外交の世界ではこれは内政干渉になるし、アメリカも世界中で介入ばかりしているわけにもいかないので、国務省のプロ外交官は距離をおいて眺めていることが多い。

英国はその昔、大陸に直接介入することなく、大陸諸国同士の争いにおいてバランサーとして行動することで自分の地位を維持し、大陸の安定も維持していた。同じような行き方を夢見る者はアメリカにもいる。これは"Concert of Policy"とか、数年前までは"Off-shore Balancing"と呼ばれていたらしい。後者など、わかりやすい呼び方だ。

ユーラシアの真ん中、つまりアフガニスタン、中央アジアは、中国、ロシア、イランなどににらみをきかせるのに便利な位置にあるのだが、アメリカが本気で対応するだけの理由はどうもない。だからこそ、ここらあたりはOff-shore balancingでいけばいいのだと思う。

アフガニスタン問題で中国とどう協力するか
というようなことを、僕は今回、「国益センター」(3月まではニクソン・センターと言っていた)主宰のシンポジウムに出席して、しゃべった。このシンポは、アフガニスタン撤退に伴うアメリカの地域政策を議論するものだったからだ。そのうえで僕の方からは、以下の諸点を述べておいた。

①日本はアフガニスタンに自衛隊を送っていないが、50億ドルもの無償援助を約束し、650もの学校を建設・修理、1万人の教師に研修を行い、治安維持に必要な警察官の俸給の面倒も見ている。そして650キロもの幹線道路を改修し、現在では社会の安定化にとって最も重要な農業振興支援に軸足を移そうとしている。

②これはアメリカに対する団結の表明でもあるが、基本的には日本自身の利益になるからやっている。というのはアフガニスタン、中央アジアはユーラシアの真ん中、ロシア・中国の裏庭という地政的位置を占めるため、この地域諸国と良好な関係を築いておくことが日本の対ロ・対中外交上も有利に作用する、ということがあるからだ。

③米国、西欧諸国もこの地域に優先的関心を注ぐことはできないかもしれないが、それなりの協力関係を築くだけでコスト・パフォーマンスの高い外交を行うことはできるだろう、たとえばOSCEの中に中央アジア部会のようなものを作って日本もその中に入れ、上海協力機構も包含してしまうようなことが、地域の安定を維持するうえで有効だし、中央アジア諸国からも支持されるだろう。

ワシントンはあまたのロビーストたちが我こそはと様々のアイデアを売り込む場所だから、上記のようなことを僕が言っても、誰も花を持たせようとはしない。特にアメリカにどうこうしたら、というのは無視される。それは、ワシントンのロビーストたちのやることだからだ。だから僕の時も、「時間オーバー。はい次」という感じ。大声で叫べばその時は効果があるようでも、「あいつは少し・・・」という評価が確立して、次回からは呼んでもらえなくなるのである。

で、このシンポジウムでかなり議論されたことは、アフガニスタンの安定化に中国をどう引き込むかということだった。中国は、アフガニスタンのタリバンを昔作り出したパキスタンとは冷戦の頃からの半同盟国だし(パキスタンの最大敵国であるインドは当時、ソ連と提携関係にあった。中国はそのソ連と対立していたから、パキスタンはかっこうの提携相手だったのだ。ベトナム戦争から足を洗うために中国との関係を樹立しようとしたキッシンジャーは、1971年パキスタンからヒマラヤを越えて中国入りしたのである。今では新疆地方からパキスタン領に入り、ペルシャ湾岸のグワダル港に至る自動車道が完成している)、2007年にはアフガニスタンのカブール近くの大銅鉱床Aynakの開発権を得ている。

だからこそアメリカの一部には、以前北朝鮮やミャンマーの扱いを中国に「委託した」のにならって、パキスタンやタリバンの扱いを中国に依頼しようと提言する向きもある。だが今回シンポでは以下の意見のとおり、それだけの影響力は中国にはないだろう、というのが大勢だった。

①中国に行って専門家達と話したかぎりでは、中国はアフガニスタンにアメリカ軍がいることを一方では嫌う反面、他方では去ってほしくないようでもある。アフガニスタンが新疆ウィグル独立派の拠点になるのを恐れているのである。

②「アフガニスタンのタリバンに圧力をかけるにはパキスタンを引き込むことが重要であり、そのためにはパキスタンに近い中国にパキスタン政府の尻をたたいてもらわないといけない」という認識も一部に見られるが、中国はアフガニスタンとパキスタンを切り離して考えているので、そのようなアプローチは有効ではないだろう。

③将来、アフガニスタンに国連PKOを展開するような場合、中国がこれに加わる可能性もある。但し工兵部隊など、ロジ方面に限られるだろう。

なお「国益センター」の一行はこのシンポジウムに先だち、国際交流基金の支援も受けて中国、韓国、日本を駆け足で回ってきたのであるが、その結果、「中央アジアについては、米日韓の間の協力が重要である。但しこれは中国を包囲するというものではない」という認識に至ったと述べていた。まったく共感できる。

コメント

投稿者: 高木 恒久 | 2011年4月28日 09:48

河東様のアフガニスタン事情への卓見読ませていただき有難う御座いました。大変興味深い文章です。毎回楽しく勉強させていただいてます。

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