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世界はこう変わる

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2011年4月15日

2011年3月アメリカの印象8ーー米ロ関係はまた相互不信へ?

米ロ関係はかつての米ソ関係と違って、国際情勢全般の基調を定めることはもはやない。オバマ政権の対ロ外交は、「ロシアに邪魔をさせない(特に核削減、そしてアフガニスタン作戦のロジで)、悪さをさせない(特に対イラン関係で)」ということに尽きる。そしてそのために、ロシアの顔にことさら泥を塗るような所業は避ける。
それは、できの悪い腕白の頭を撫でているのに似ている。ロシアが2020年までに700億ドルを費やして軍備を一新する構えを示しても、「できるはずがない」ということで無視しているし、中距離ミサイルとしても使える対空ミサイルのS-500を開発中であることも無視されている。この中距離ミサイルというのは1970年代末に、ソ連が配備したSS-20が欧州にとって脅威になるということで、大変な騒ぎになった。NATO側はこれに対抗するPershing-2を配備する構えを示すことで、やっと相互撤廃で合意した経緯がある。
ロシアは最近、新型ミサイルの開発に手間取っているため(たとえば原潜に配備する戦略ミサイル「ブラーヴァ」は何度も実験に失敗しているため、新造原潜は搭載ミサイルなしに遊休状態にある)、S-500の開発もうまくいかないだろうとタカをくくっているのか、開発に成功してもこれは中国に向けられるだろうと思っているのか、どちらかだろう。しかしS-500は、これを水平方向に向ければポーランドのMD基地に到達し得る。ロシアはこのMDを、ロシアの核ミサイルに対して向けられるものと思い込み、脅威と認識しているからだ。

ロシアとの「リセット」は曲がり角へ
今回会ったロシア専門家の中で一人、目新しいことを言う者がいたので、それを紹介すると:

「オバマ政権はこれまでロシアとは『リセット』と称して友好関係を演出してきましたが、これが転機にある兆候があります。リビアにしろ、イランにしろ、米ロの間に信頼関係がないことがまた如実になりつつあるからです。米ロ関係というのは、『協力と不信の間の競争』のようなところがあり、今はまた不信が強まりつつあるのですが、米ロ関係の先行きは2012年の大統領選候補者にメドベジェフとプーチンのどちらがなるかを大きく左右するでしょう」

この専門家が言うとおりだと思う。昨年9月、メドベジェフ大統領はオバマ大統領に頼まれ、イランに対空ミサイルS-300を輸出しないことにしたのだが、11月にイラン当局はS-300に匹敵する対空ミサイルを自力で開発したと公言している。S-300はアルメニア等第三国にもこれまで輸出されてきたので、ここからイランに抜けた可能性もある。こうして、アメリカにとってロシアは相変わらず信用できない相手だし、ロシアも中近東諸国における一連の民主化暴動には米国系NPOも一枚かんでいると思って(2000年代後半、ウクライナ、グルジア等で続発した「色つき革命」では欧米NPOによる「民主化指南」が大きな役割を果たした)、対米警戒心を緩めていないだろう。

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