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世界はこう変わる

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2008年7月18日

ロシア情勢メモ(08年6月から)

(ロシアの大統領選も終わったし、忙しい時期も過ぎたので、また「ロシア情勢メモ」を再開します。
速報性はありませんし、種々報道を出所としているので、断りのない限り、それぞれ確認を要します)
                                                  河東哲夫

5月から6月にかけてロシア、そして西側での論調は、下記1,2の「 」内の問題意識をベースに推移した。それに対する当面の回答は、それぞれ( )の中に書いておいた。

1.「メドベジェフ大統領、プーチン首相の間で権限の配分はうまくいくのか? 両者、両チームの間に対立は生じないのか?」
(プーチン大統領のスタート時も同じだったように覚えているが、権力の交替時には風向きがはっきりしないものだ。メドベジェフ大統領も自分のカラーと力をはっきり打ち出せる前に、夏休みに入った。工業生産は6月に入って伸びが鈍っており、普通大統領が代わった時には統計を粉飾してでも「成長」を演出するロシアにしてみれば珍しいことだ。
そして、種々の世論調査ではプーチン首相の支持率が一貫してメドベジェフ大統領のそれを凌いでいる。特にプーチン首相には青年層の支持が高いことが特徴のようだ。だが6月まではほぼ同等にマスコミに出ていた両者も、6月中旬以降はメドベジェフの活動紹介がプーチン首相を2~3倍上回ったそうだ(全国テレビ放送で)。洞爺湖サミットのせいもあるだろう。

ロシアの夏休みは本当に「The 夏休み」という感じがあって、政府関係者も三々五々2週間以上の休暇に出かけてしまう。気の合う者は夫婦ぐるみでヨーロッパを旅行したり、地中海のリゾートで過ごしたりして、8月中旬にはモスクワに帰ってくる。そして休みの間に友人達と議論して準備した「陰謀」(人事や政策)の数々を実現しようとするのだ。だから、風向きは夏明けまではっきりしないかもしれない。

2.「メドベジェフ大統領は『リベラル』だから、シベリアに流刑されている石油資本家ホドルコフスキーは赦されるだろう。そしてメドベジェフ大統領は、プーチン大統領の対西側強面政策も修正するだろう」
(ホドルコフスキー釈放については、メドベジェフ大統領就任後間もなく、うわさが流れ始めた。ホドルコフスキーをかつて弾圧する側に回ったセーチン副首相〔当時は大統領府副長官〕などは、これに抵抗するだろうから、まだ行方はわからない。マスコミでの報道振り(特にテレビ・ニュース)が自由化されてきたかどうかについては、まだ大きな変化はない。
対外関係についてメドベジェフ大統領は、当初は欧米への批判的言辞を避けていた。また7月中旬には大使達を前に外交基本演説をしたが、エリツィン、プーチンの同種の演説では入っていた「大国としてのロシア」という表現が落ちていたようだ。一部の識者の間では、自国での格差をなくし、世界の貧困をなくすことに貢献してこそ大国と言える、という日本的な発想が少しづつ顔を出し始めている。
キッシンジャーはインターナショナルヘラルドトリビューンで、この数年米国がロシアの利益を過度に無視し、不必要に辱めてきたことを戒め、7月14日付けの英国ガーディアン紙も「ポスト・ソ連」世代としては初めてのロシア指導者であるメドベジェフ大統領をどうして侮辱するのか、と書いてエンゲージメント政策を説いている。メドベジェフが洞爺湖でブッシュと会っていたその時に、ライス国務長官はチェコに飛んでロシアの嫌がるMD配備に署名したこと等を批判しているのだ。
まあ、これからモスクワ、ワシントン双方の中での諸勢力のせめぎ合い、そして偶発的な事件も重なって、メドベジェフ大統領下の米露関係は形作られていくだろう。マッケイン、オバマ双方のロシア問題アドバイザーは、反露ではなくエンゲージメントの立場だ)

3.「プーチン大統領の第2期、ホドルコフスキーの「ユーコス」石油会社が解体され国営のロスネフチに買収されたばかりでなく、政府要人がこれら国営企業の取締役を兼任する、「経済の再国有化」現象が顕著になった。メドベジェフ大統領は、このトレンドを逆転させ、再び市場経済化へのトレンドを明確にするかどうか。」
(メドベジェフ大統領、シュヴァーロフ首相は、国営企業の取締役を政府要人が兼任するのを最小限に限定する旨公言しているが、プーチン首相の側近であるセーチン副首相などは慎重に時間をかけて行うべきだと公言している。)

(以下、内政、外交、軍事、経済、極東の順)

内政

★6月、スルコフ大統領府第一副長官が与党「統一」の大会で演説して、「エリートは終生官職についているべきではない。ロシアが成立して以来、官職にいる者がいるが、これはよくない」と述べたそうだ。
ソ連崩壊からロシア成立にかけては、政府要人の構成を見る限りでは革命のようなことが起きた。平均年齢が大きく若返ったのだ。
ところがそれ以来、ロシアという車のハンドルを握っている人たちはあまり変わらない(我々古手のロシア専門家にとってもその方がいいのだが)。メドベジェフ大統領は登場したが、40歳以下の連中にはまだあまり出番はないようだ。

★「知事公選制」をめぐる波紋
6月16日には、ソ連崩壊以後一貫して地元の利権を握っているタタールスタン共和国のシャイミエフ大統領が、ある大会で地方首長公選制の復活を唱えた。「ロシアは知事公選制に戻ることになるだろう。現在のように、モスクワが指名してきた知事候補を地方議会が認めない場合、ロシアの大統領はこれを解散できるという現状には反対だ」というのだ。

エリツィン時代、知事は公選制だった。公選された知事達は強い力を持ち、モスクワで危機が起きるたびに、「地方はエリツィンを支持しているかどうか」が常に問われた。
ところが2004年9月、ロシア南部のベスランという町で学校がチェチェン独立派などによって占拠され、1,000名以上の児童、PTAが人質になった。数日間続いたにらみ合いの後、銃撃戦が始まり、児童約200名を含む数100名の死者が出た。この事件の直後、モスクワは知事の公選制を廃止して実質的な任命制に移すことで、地方掌握を強めたのだ。

シャイミエフの発言はだから、メドベジェフ大統領の力を試したものとさえ取れるのだが(それとも、2010年3月にシャイミエフの任期は切れるので、予防線だったか)、不発に終わったようだ。コザク地域発展相が「知事公選制に戻るつもりはない」と言っただけで、報道も盛り下がった。
2004年任命制になって以来、85の自治体のうち31箇所で知事が代わったが、任期途中で更迭されたのは3名のみであるそうだ。つまり現職の知事達はクレムリンとはよろしくやっていて、今のままが一番いいのだろう。

★6月18日、ユルゲンス「現代発展研究所」所長はロイターに対して、「メドベジェフ大統領は保守勢力と戦っており、仲間を見つけられないと敗れるだろう」と述べた。「現代発展研究所」はメドベジェフ大統領に近いシンク・タンクと見られているが、プーチン大統領第1期にグレフ経済発展貿易相の下で数々の新機軸が打ち出されたのと比べると、ロシアのインテリも大分疲れてきたなと思う。それでも、所長のユルゲンスが言うことなので重みがある。
ところが、「メドベジェフ大統領は保守勢力と戦っている」という見方が出てくるたびに、「じゃあ、その『保守勢力』とは誰のことだい?」という疑問が当然起きてくるのだが、これがおそらくプーチン首相側近の何人かを指すためだろう、観測記事が出てくるたびにスルコフ大統領府第一副長官あたりが火消しにまわって、盛り下がらせてしまうのだ。小泉総理の時代を思い出すと、いっそ誰かを人身御供に出し「抵抗勢力」ということにして、メドベジェフ大統領を主役にしたドラマを作ればいいのだが。

自由化を恐れる青年団体
プーチン大統領の第2期では「ナーシ」という名の青年団体が作られ、随分ナショナリスティックな運動をしていたが、メドベジェフ大統領になってからお呼びでなくなったようだ。そこで6月、スルコフ大統領府第一副長官はクレムリンに青年愛国団体代表を集め、「メドベジェフ大統領になって『雪どけ』(自由化)があるというのは事実ではない。そのようなうわさは、メドベジェフ大統領とプーチン首相の間を裂こうとする試みだ。君たちは、両者の間を裂こうとする外国、そして国内の『破壊的』勢力に対抗しなければならない」とアジった。アジる分には助成金は要らない。

チェチェンで何か?
6月27日、ナルイシキン大統領府長官とスルコフ大統領府第一副長官(父親がチェチェン人だとは今回の報道で初めて知った)がチェチェンを突然訪問して、カディロフ大統領に会った。カディロフはまだ30代でありながら、強権でチェチェンの平和を維持している。エリツィン時代のチェチェン戦争で廃墟となった首都グローズヌイは、建築ブームで見違えるようになったそうだ。
大統領府長官と第一副長官が連れ立って訪問するというのは、ただごとではない。アメリカで言ったら、チェイニー副大統領とライス国務長官が連れ立って訪問するほどの重さを持っている。報道から推測できることは、カディロフが独立王国的存在となりつつあることに両者が懸念を表明し、特にモスクワからの潤沢な予算(51億ドルと書いてあるが、期間は不明)の使途が不透明であることを論じたらしい。
プーチン大統領時代には、モスクワとカディロフとの間はうまくいっていた。メドベジェフ大統領になってチェチェンは再び不安定要因となるのか、あるいはチェチェンに隣接し、モスクワとの関係が悪化しているグルジア共和国への対処ぶりについて議論したものか、興味津々。

外交
メドベジェフ大統領のロイターとのインタビュー(6月23日)
ロシア外交はリベラルでも保守でもない。国益追求だ。プーチン時代とニュアンス、スタイルは変わるかも知れないが、本質は変わらない」
「BPの件は(注:BPがロシアに作った合弁会社の支配権をロシア側が求めている件)、法律に則って進める。政府は介入しない。ガスプロムあるいはロスネフチが株を買うとは聞いていない」
(注:このインタビューでは、メドベジェフ大統領は西側を批判せず、法治、自治、所有権の尊重を強調した。貧困と汚職がロシアの大きな問題だとする。米国との係争案件であるグルジア、MD配備、NATO拡大には言及しなかった。
洞爺湖サミットの議題もよく勉強しており、財政、金融にも詳しい。プーチンよりもこれらのグローバルな問題に「近い」感じがする。プーチン大統領の場合、ややソ連的な匂いがしたものだ)

★6月上旬、ロシアの石油生産の中心地ハンティ・マンシスク(随分豊かな町だそうだ)でEU・ロシア首脳会談が開かれた。毎年開かれているが、メドベジェフ大統領がロシアを代表するのは、初めてだ。
僕に言わせれば、ロシアはEUにその経済関係の大半を依存しているし、EUはロシアに石油・天然ガスを大きく依存しているのだから、大きく連合してしまえば、世界政治の大変な核になれると思うのだが、ヨーロッパ人には先進地域としての自負心が根強いし、緊密な安保・経済関係を有する米国がとても同意しない(ロシアは米国との貿易関係はほとんどないのだ)。

そこで、この首脳会議ではEU・ロシア間の「新パートナーシップ・協力条約」(PCA)締結へ向けての交渉開始を宣言することが目玉となった。現行のパートナーシップ・協力協定は1997年に結ばれたもので、改定が長年の課題になっていたのだが、ロシアとの間で経済問題を抱えるポーランドやリトアニアがこれを機会にロシアから譲歩を得ようとして、ゴーサインを出せずにいたのだ。
焦点は、エネルギー問題の扱いになるだろう。EU側は、ロシアがそのパイプライン使用を他国にも開放するよう求めているが、ロシアは認めようとしていない。

もうひとつ、この首脳会議でメドベジェフは、6月初めにサンクト・ペテルブルクの会合で打ち上げたのにマスコミにはほぼ無視されている「新欧州安保協定」締結のための首脳会議開催(NATOとか集団安全保障機構とかの枠組みを取り払い、各国が裸で参加して欧州の安全保障問題を話し合うという趣向。米国、カナダも入れている。1970年代の「緊張緩和」の時代にできたCSCEに似ているが、すでに裸になっているロシアがNATO諸国にお前も裸になれと言っても通るまい)にも再度言及したようだ。

中ロ関係
3月、中国の在ロ大使は、の線引きも終わり、年末までに引き渡されるだろうと述べた。中国側がこれを軍の基地とするという報道を否定し、自由貿易ゾーンとするアイデアもある等述べた。
(注:黑瞎子島は、ハバロフスクでアムール川にウスリー江が合流する場所に出来た巨大な中洲。清の時代以来ロシア・ソ連領となり、ハバロフスク市民が別荘を建てたりした。アムール川の流れの中の多数の島の領有権を整理する中で、ロシアが譲る形で黑瞎子島を「半々」に分けることにしたもの。基本合意ができてから数年経つが、実際の線引き作業が長引いて現在に至っているもの)



★6月、ロシアの新聞コムソモルスカヤ・プラウダで、総参謀本部のミハイル・ポレジャノフ大佐なる者が面白いインタビューをやっていた。それによれば、

○アラスカ、カリフォルニア、チェコ、ポーランドに配備される米国のMDは、同時に500弾頭に対処できる。ロシアは702のICBMに3,155の核弾頭を所有(別の個所では、430に1,605と言っている)している。
しかし、米国は48の潜水艦に1,484の通常ミサイル、92の爆撃機に誘導爆弾を持つ。誤差は1~2mだ。ロシアのサイロの直径は6mだから、アメリカの通常兵器による第1撃でやられてしまう。すると、残るのはSLBMが20、航空機が80機しかない。ロシアのミサイルの誤差はSotkaが900~20m、Voevodaが500m、トーポリが200mだ。

○2010年には、ロシアのICBMは350、1,200核弾頭に減っているだろう。
○米国は500のICBMに18の原潜(SLBM432)、240の重爆撃機。つまり、1,200の運搬手段に約6,000の弾頭を有している。2015年には1,700~2,200弾頭で十分だと言っているが、米国はこれまでも核弾頭を完全には破壊していないのだ。

○ロシアに多弾頭核ミサイルMIRVがなくなれば、米との核バランスはかつての8分の1に低下する。米がMDを配備するともっと低下する。
アラスカ、カリフォルニアに配備されたMDは少数だし、落下直前のミサイルは速度も大きいので、当てるのは難しい。しかし、ポーランドからMDを発射すれば、ロシアから発射されたICBMがまだジェット機くらいの速さの時に撃ち落せる。

ポーランドに配備予定のMDはミニットマンの第2、3段を改良したものであり、5000kmの射程がある。ロシアのノヴォシビルスクまで届く。モスクワまで11分、ウラルまで15分。
(注:つまりロシアにとっては、1980年代のパーシング2ミサイル配備以来の恐怖なのだ。アメリカが、このMDはロシアに向けたものではないといくら言っても、ロシアは自分の横腹にいつもピストルを突きつけられているように感ずるだろう。

経済

★賃金引上げ→インフレ?
5月8日の首相就任演説の中でプーチンは、2009年1月1日からロシアの最低賃金を、現在の2330ルーブルから4330ルーブルにほぼ倍増させるべく、夏までの下院会期内に決議するよう提起した。政府が左右できるのは公務員の給料だが、プーチンがまだ大統領だった2月に明らかにしたところでは、ロシアでは政府予算で給料をもらっている者が労働人口の実に3分の1に及んでいるそうで、彼らの給料を約2倍にしたらその額はかなりなものになるだろう。
プーチン前政権の8年間で、公務員の数は116万人(2000年)から162万人(07年)に増えた。ロシア紙によると、この1年間の名目賃金の伸び率は民間17%に対し、公務員は30%。月5000ルーブルで暮らす年金生活者らは窮状を訴えている。

★民間では、資金不足が深刻になりつつある。一部の試算では、資金需要は企業・個人の預金総額の倍。預金金利(年10%)をインフレ率が上回るマイナス金利が広がる中、長期投資資金の出し手はほぼ国家だけになっている。

★6月、昨年10月から課されていた小麦などの輸出関税が撤廃された。国内価格の上昇を抑える目的で小麦に10%、大麦に30%の輸出関税を課していたものだ。今年1月下旬に大麦は据え置き、小麦は40%に引上げていたが、(もう選挙も終わったし)洞爺湖サミットでは食糧輸出国の責任も問われるので、撤廃を決めたものだろう。

ロシアは目下、世界3位の穀物輸出国だ。前農業年度(2007年7月~08年6月)の穀物輸出は1265万トン(うち小麦が1160万トン)となったもよう。
もっともソ連時代には世界最大の穀物輸入国だったのだが、ソ連崩壊後の混乱期に牛を大量に屠殺した(家畜数は1918年のレベルに落ちた由)ために穀物が余ったのだ。逆に牛肉、牛乳を中心に輸入がなければやっていけない品目も多く、食品・農業原材料の46%を輸入している。食用油は50%、食肉は75%を輸入していて、食品輸入額は00~06年に3倍になったのだそうだ。

報道では、西欧の企業がロシア、ウクライナの農地を実質的に買い占め始めている。
★4月にはゴルデエフ農相が閣議で、「食糧安全保障法」を作ることを提唱した。食品に政府が価格助成金をつけて低価格を維持するとともに、貧困者には配給券を配るというもの。この「Back to the ソ連」のアイデアはさすがに反対されて(ソ連の財政は、助成金額が際限なく増えて破綻したのだ。そして助成金が払えなくなったところで大インフレが始まった)、つぶれたのだが、それでも経済貿易省は価格統制されるべき重要品目(パン、ミルク、食糧油、バター、玉子、塩、茶)をリストアップしたのだそうだ。大統領選挙を目前にしてのパフォーマンスだったのかもしれないが、それにしてもDie hardなソ連思考。

★ガスプロムは08年、相次いで有力ガス田を獲得している。代表的なのがサハリン3のキリンスキー鉱区(埋蔵量7,200億立方メートル)とサハ共和国にあるチャヤンダ・ガス田(同1兆2000億立方メートル)だ。いずれもサハリン1、2の埋蔵量5000億立方メートル前後をしのぐ。TNK-BPからは、東シベリアのコビクタ・ガス田(同2兆立方メートル)を買収する件でも近く最終合意が予定されている。
(注:この話しが日本にとってはどんな意味を持っているのか、専門家の意見を聞きたい)

★6月、ロシアの鉄鋼大手セヴェルスターリが米国の鉄鋼メーカーEsmarkを12.5億ドルで買収。2.5億ドル投資して、北米一の圧延工場にするつもりだそうだ。これでセヴェルスターリは、米国で4番目の規模の製鉄会社になったそうだ。こんな形で米ロが経済関係を緊密化させるのも悪くない。

極東
2012年APEC首脳会議建設案件2012年にウラジオストックでAPEC首脳会議が開かれることになっていて(そのころまでAPECが残っていればの話し)、関連の建設案件が関心を浴びている。ウラジオ港の対岸の島に会議場を建設し、そこまで橋をかけようという話しなので。
で、その「金角湾」(イスタンブールの同名湾をまねたものだ)横断の橋梁工事は7月、沿海地方の太平洋橋梁建設会社(Joint Stock Company “Pacific Bridge Building Company (TMK)”)が落札したのだそうだ。金角湾横断橋梁は、長さ1,388メートル、主要スパンは737メートル。契約金額は、179億ルーブル(約800億円)なのだそうで。

極東経済社会発展計画
極東といえば、ロシア政府が新たに(と言うか、またまた)定めた極東開発計画も、日本の企業に注目されている。昨年7月デデューヒン地方開発省次官がインターファックスに述べたところでは、東シベリアも含めて6,000億ルーブル(約2兆5千億円)の予算が向けられ、2025年までに9兆ルーブルの投資を予定している由。
これまでの極東開発計画は予算分が25%程度でうまくいかなかったが、今度は75%なので期待が高い。もっとも予算はあっても、全体のマネジメントができておらず、日本の企業もいったい誰に話しを持っていっていいのかわからずにいる。
○2020年までに生産を12倍にする。東シベリアも含めて2013年までに6000億ルーブルの中央予算。2025年までに9兆ルーブルの投資。

サハリンとロシアの間にも架橋?
サハリンのホロシャビン知事は、ロシア本土とサハリンとの海峡に橋かトンネルを建設する計画が、2020年までのロシア連邦の「社会経済発展戦略計画」に盛り込まれたことを明らかにした。Good luck!

ダリキン沿海地方知事、危機一髪
5月、ダリキン沿海地方知事が、国家資産を着服した疑いで捜査機関の聴取を受け、執務室と自宅を家宅捜索された。知事は一時地元の病院に入院し、それから急遽モスクワの中央病院に移って(と言うかそこを本拠として運動し)、ウラジオストックに帰って残留宣言をしたそうな。これで、メドベジェフ政権の下でも安泰?

賃金未払いの増加
サフォノフ極東地方・大統領全権代表によれば、極東では賃金未払いが増加している。6月1日現在で極東における不払い賃金の総額は3億4,170億ルーブル、年明けと比較するとサハ共和国の労働賃金の不払い金額は7倍に、ユダヤ自治州では約4.4倍、ハバロフスク地方では1.2倍、サハリン州では1.1倍に増えた。労働賃金の支払が遅れる主な原因は、依然として、企業・団体に自己資金がないことだ。
(注:「自己資金がない」とは、利益のすべてを中央に吸い上げられていたソ連時代の物言いだ。あるいは極東地方は今でも国営企業が圧倒的なのか?)


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